西中国山地の山頂部に発達する湿性型ブナ林とその立地環境

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  • Distribution of moist beech forests on mountain tops and their habitat conditions in the western Chugoku Mountains, Japan
  • ニシ チュウゴク サンチ ノ サンチョウブ ニ ハッタツスル シッセイガタ ブ

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抄録

中国山地の山頂部に湿性型のブナ林が発達する原因を明らかにするために,広島県に位置する臥竜山において植生と土壌を中心とした調査を行った。本地域のブナ林は1群集,3亜群集,7変群集に区分され,各群落の分布は地形とよく対応していた。この山岳には三つのカテゴリーに含まれる6タイプの土壌が分布していた。植生単位,地形,土壌との関係をみると,斜面を中心とした群落と土壌の関係は他の日本海側山地でみられる同類の群落と同じであったが,山頂から斜面中部にまで広がる湿性タイプの亜群集と火山灰由来の土壌との強い結びつきが特異的であった。ここの立地条件として,多量の降水と雲霧帯の形成による湿潤化,平坦地や緩傾斜での緩慢な水の移動,空隙の大きい火山灰由来の土壌の高い保水性,その土壌と下層の花崗岩•流紋岩由来の土壌との水連結の停止などの立地条件の相互関連性が重要である。上記の条件下で長期間にわたり湿潤な立地条件が維持されるため,山頂部に湿性の群落が形成され維持されているものと考察された。この現象の発現は広く日本各地のブナ林においてみられるもので,これを平尾根効果(plain summit effect)と呼ぶことを提案したい。

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参考文献 (33)*注記

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