ペプシンで可溶化したホタテガイ外套膜由来コラーゲンの特性

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  • Characterization of Pepsin-solubilized Collagen from Scallop Mantle
  • ペプシン デ カヨウカ シタ ホタテガイ ガイトウマク ユライ コラーゲン ノ トクセイ

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抄録

ホタテ外套膜からペプシン可溶化コラーゲン (SMPC) を抽出した. 得られたコラーゲンは牛タイプIコラーゲン, 牛タイプVコラーゲンと比較して以下の特徴があった.<br>(1) SMPCは牛胎盤タイプVコラーゲンとよく類似したアミノ酸組成とSDS-PAGE泳動パターンを示した.<br>(2) V8プロテアーゼを用いて酵素分解を行った結果, SMPCは牛胎盤タイプVコラーゲンや牛皮タイプIコラーゲンよりも分解を受けやすく, 両者とは異なる一次構造を持っていることが分かった.<br>(3) SMPC繊維を再構成して電子顕微鏡で観察した結果, 繊維の太さは牛皮タイプIコラーゲン繊維の約半分で, ほぼ均一な繊維を形成していた.<br>(4) 牛皮タイプIコラーゲンとゲル形成能を比較した結果, SMPCのゲル形成能は牛タイプIコラーゲンよりも低いことを認めた.<br>(5) 牛皮タイプIコラーゲンと吸湿性を比較した結果, SMPCの方が高湿度下において, より高い吸水性を示した.<br>以上のように, ホタテガイ外套膜ペプシン可溶化コラーゲンは動物筋肉の主要な結合組織であるタイプI型コラーゲンとは異なる特徴を示した. その一方で, 他の無脊椎動物のコラーゲンと類似の特徴を示し, 牛胎盤タイプVコラーゲンにもよく類似していた. しかし, アミノ酸組成中HyLysの量がタイプVコラーゲンに比べてやや少なく, V8プロテアーゼの分解パターンが異なっていた. 生物学的に分子種を確認するには遺伝子解析が必要であるが, ここでは食品や, 生体に応用することを目的としてSMPCの部分特性を調べた. ホタテガイ外套膜コラーゲンは牛に対してはBSE問題にかかる優位性があり, 豚にはBSEの問題はないものの, 牛と同じ “畜産” ということで多少イメージダウンになっている. 鶏は鶏インフルエンザでイメージが低下しており, 魚皮コラーゲンには悪臭の問題がある. ウロコや骨は脱灰が大変である. 以上の点からホタテガイ外套膜コラーゲンの特性を把握した上で, 抽出率や処理コスト低減を図ることにより従来品に対して, 少しずつ代替が今後可能になっていくものと考えられる. ホタテガイ外套膜ペプシン可溶化コラーゲンのように安価かつ安定的に大量入手できる原料からタイプV型に類似したコラーゲンを抽出することができた事は, 今後, さらに分子特性と化学, 物理的な性質を詳しく解析して機能性材料として利用していくための基礎的知見を得る上で意義深い.

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