家畜血清透析性カルシウムに関する臨床学的研究 : I. 健康犬の血清透析性カルシウム

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タイトル別名
  • CLINICAL STUDIES ON SERUM IONIC CALCIUM IN DOMESTIC ANIMALS : I. SERUM IONIC CALCIUM IN HEALTHY DOGS
  • カチク ケッセイ トウセキセイ カルシウム ニ カンスル リンショウガクテキ ケンキュウ エイブン 1

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抄録

カルシウムの生体内作用は,イオン化Caの作用によると考えられている.そこで著者らは,家畜内科学の面から,Caに関係があると考えられる疾病の血清透析性イオン化Caを検討し,これが変動するとき,とくに低血清透析性Ca状態が生体の防衛反応に対する意義を究明L7ようとした2第I報においては,健康犬血清Caの年齢的勤揺?範囲とともに,血清総蛋白量および血液の一般性状を測定した.ついで,これによって得た総Caに対する透析性Caの比率(イオン化率)を求め,血清透析性Ca(SICと略す)について,柳沢法による実測値とMCLEANの理論値(それぞれ単に実測値,.理論値と呼ぶ)とを比較検討した.健康成犬23例について,血清Caを測定した.その結果,平均値をとると,SICは4.2±0.24mg/dl(以下単位をはふく),血清総Caは11.0±0.29,蛋白結合型Caは6.8±0.39となり,理論値から求めた血清イオン化Caの平均は4、8±0.23であった.馬5例の平均では,SICが5.2±0.91,理論値が5.6±0.25,血清総Caが12.5±0.28であった.牛10例の平均では,SICが4.4±0.35,理論値が5.5±0.18,血清総Caが12.2±0.18であった.豚5例の平均では,SICが5.1±0.99,理論値が5.4±0.88,血清総Caが12.1±1.54であった.羊10例の平均では,SICが4.4±0.29,理論′1:Kが5.3±0.21,血清総Caが11.0±0.24であった.健康と見なされた大87例を,年齢的変動を観察する目的で,生後24時間・1週令・3週令・5週令・15週令・1才および2才以上の8群に分け,血清Caを測定した.その結果,1週令群および15週令群において,SICが低下する傾向を認めた.これらの測定成績をみると,健康成犬を始め,馬・牛・豚・羊において,いずれも理論値が実測値よりも高い.このことは,実験上の手技の誤差範i.川だけでは,説明できないものがある.MCLEANの計算は,Caイオンと蛋白質の結合が血漿内において可逆平衡の状態にあるという仮説のもとに作成された式および図表を用いている.そこで,動物は全ぐ鮭康かつ正常であることを前堤としているはずである.したがって,この前提がくずれた場合には,理論値が実測値と異なることがあり得ると考えられる.以上の理由から,ここに得られた実測値と理論値どの差は,いたし方ないものと思われる.今後は,各種の内科疾患における血清Caの動態を検索するとともに,その異常状態が生体に及ぼす影響を追究していきたい.

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