中国における夏の降水量の様々な時間スケールでの変動およびその長期変動と全球海面水温変動との関係

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  • Multi-Scale Summer Rainfall Variability Over China and its Long-Term Link to Global Sea Surface Temperature Variability
  • Multi-Scale Summer Rainfall Variability Over China and and its Long-Term Link to Global Sea Surface Temperature Variability

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抄録

中国における夏(6-8月)の降水量の様々な時間スケールでの変動、およびその長期変動とグローバルな海面水温(SST)変動との関係を、1955-97年の期間について調べた。まず、降水量変動に卓越する時空間パターンを、EOF解析により明らかにした。EOFの第1・第2成分をウェーブレット解析した結果、年々変動・10年~数十年周期変動・長期トレンドの各周期の変動が認められた。EOFの第1成分では、1970年代後半に中国における急激な降水量分布の変化が認められ、1980年代には華中東部で湿潤、華北と華南で乾燥となる傾向が、1960年代に比べて強くなった。この急激な変化は、20年および40年程度の長い時間スケールでの変動が、ほぼ同時に位相変化したことに伴って生じている。EOFの第2成分では、華中および華南の広い範囲で、降水量の増加トレンドが認められ、とくに揚子江流域でこの傾向は顕著である。この成分には、1970年代の後半の急激な変化は認められない。これは長期的なトレンドと20年スケールでの変動の位相があわず、それらの変動が相殺しあったため、と考えられる。次に、グローバルな海面水温(SST)変動と関係する中国の降水量の長期変動を理解するために、この2つを場を特異値分解解析(SVD)によって解析した。SVDの第1成分では、華北の乾燥・華中の大雨傾向は、エルニーニョ的なSST偏差分布と関係していることがわがった。この成分には、降水量のEOF成分では同時に現われることがなかった、長期トレンドおよび1970年代後半における急激な変化が、ともに認められた。SVDの第2成分では、揚子江と黄河の間の地域での降水量の不足(過多)と、東部太平洋での波動状のSST偏差分布、すなわち、熱帯と中緯度地域における負(正)偏差と、北アメリカ西岸沖の亜熱帝域での正(負)偏差が関係していることが示された。SVDの第3成分によると、揚子江河谷での降水量変動は、北緯20度・東経140度を中心とする西太平洋におけるSSTと関係している。中国各地の降水量分布は、SSTの影響によって現われるとみられるこれらのSVD成分の、相殺や強化の結果として現われるものと考えられる。SVD解析によって見い出されたもっとも重要な関係は、クロス相関解析によっても確認された。最後に長期トレンドスケールで、大規模循環場の変化に伴い、中国の降水量とグローバルなSSTが変化するシナリオを提示した。

収録刊行物

  • 気象集誌. 第2輯

    気象集誌. 第2輯 77 (4), 845-857, 1999

    公益社団法人 日本気象学会

被引用文献 (8)*注記

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参考文献 (48)*注記

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