季節病の医学地理学的研究(1)

書誌事項

タイトル別名
  • The Geographical Study of “Seasonal Diseases” (1)
  • The Geographical Study of “Seasonal Diseases” (1)
  • 日本の季節病カレンダー
  • Tentative Calendars of “Seasonal Diseases” in Japan

説明

季節病の分布様式を,季節病カレンダーを通して地域的に-北海道,岩手,東京,大阪,鹿児島-戦前,戦後の比較を試みながら検討した。季節病としては肺炎,気管支炎,結核,脚気,脳出血など14種類を選び,それぞれ月別死亡率を算出し,各疾病による死亡の多い季節-流行期-をきめ,死亡率に階級区分をほどこして図示したのが季節病カレンダーである。<br>このカレンダーから種々な事実が読みとれるが,なかでも戦前,戦後の比較は注目に値する。即ち戦後は夏季に流行期のみられた脚気をはじめ,百日咳,腸チフスなどの流行期が消失して,むしろ冬季に流行期が移行してきている。また地域によつて夏に流行期のみられた結核や老衰も冬にきている。癌も11月を中心に山がでてきて,これも戦前よりやや冬の方に近よつている。しかしもともと冬の季節病である心臓病や脳出血は,戦後もそのまま冬に流行期を示す。このように季節病の夏の流行期が消失して,冬に流行期を示す冬季型に変りつつあるが,この傾向は文化の発達した地域ほど早くあらわれるようである。<br>また地域的,歴史的の分析から,季節病の分布様式は決して気候的な自然条件だけで決定されるものではなく,地域独自の生活様式,社会経済的条件,医薬の進歩など種々な条件で決定されることがわかつた。

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被引用文献 (1)*注記

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