大型帯状エコーに伴う気象系の構造

書誌事項

タイトル別名
  • Mesoscale Meteorological Structure Associated With Huge Band Echo

抄録

富士山レーダーでは,幅300km程度の大型帯状エコーがしばしば現れる.その走向は大体WSW-EKEである.これらの帯状エコーが,どのような気象構造を伴っているかを,高層観測データを用いて調べた.帯状エコーに共通する本質的な性質を見出すため,なるべく多くの例を解析し,これを重ね合わせて平均的な気象構造を描き出すことを試みた.このようにして得られた,帯状エコーを横断する平均の鉛直断面から,次のような特徴が明かにされた.<br>(1)層状性の帯状エコーの内部では,対流圏中下層に等湿球温位線の混んだ層があり,これはまた正うず度の大きい領域とも一致する.この層は約1/100の傾斜を持っており,いわゆる前線面に対応するものと考えられる.<br>(2)この前線面から上では大体上昇流域となっており,その最大値は数十mb/hr程度で,帯状エコーの中心線の南側に位置している.これに対応し,強エコー域も中心線の南側に存在している.前線面の下は大体下降流域となっている.<br>(3)層状性帯状エコーに平行な風、速成分は,帯状エコーの中央部の500mb付近に最大値を持ち,ここから強風域は斜め下方に伸び,700mbでは帯状エコーの南縁付近に位置している.<br>(4)対流性帯状エコーの場合は,湿球温位および正うず度の分布から見た前線面は,帯状エコーの北側に位置している.つまり対流性帯状エコーはプレフロンタルな性格を示しており,下層の湿舌の上に位置しているように見える.<br>(5)対流性帯状エコーの場合,走向に平行な風速成分は層状性に比べてかなり小さいが,分布状況は似かよっている.<br>以上に得られた帯状エコーの平均的性質は,帯状エコーの生成•維持機構を考える上の基礎となろう.またこの平均的性質を利用して,帯状エコーが高層観測データの乏しい領域に現れた場合に,その周辺の気象構造の性質を推定することも可能になろう.

収録刊行物

  • 気象集誌. 第2輯

    気象集誌. 第2輯 53 (2), 127-138, 1975

    公益社団法人 日本気象学会

参考文献 (8)*注記

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