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- 近藤 純正
- 東北大学•地球物理学教室
書誌事項
- タイトル別名
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- Heat Balance of the East China Sea during the Air Mass Transformation Experiment
- Heat balance of the China Sea during the air mass transformation experiment
説明
1974年と1975年の気団変質の観測(AMTEX)データをもとにして,黄海と東支那海周辺海域の熱収支と海面応力を,主として空気力学的方法を用いて評価した。それによると,海面が大気へ失ない顕熱と潜熱(H+lE)は海洋熱(海洋)の横方向の乱流と黒潮によって運ばれる熱によって,大体補償されている。放射と海中貯熱量は二次的な役割をはたしている。なお,その他の主な結果は以下の通り。<br>(1) 6角形に選んだAMTEX海域内でみると,H+lEの全期間の平均値は,1974年では平年値の約86%であったが,1975年では約132%であった。これは主として,“cold”periodの長さのちがいによるものである。いつれの年も“cold”periodの最盛日には,700~800W•m-2=1440~16501y•day-1,“warm”periodには100~200W•m-2程度である。<br>(2) 次に,南西諸島には,ほぼ2週間に1回の割合で大陸から寒波がやってくるが,この時黒潮に沿って,最大1,000W•m-2にも達するほどの熱放出が見られる。しかし浅い大陸棚上では海洋熱の影響も弱く,水温が低いこともあって,熱放出量は少ない。一方,風が海面に及ぼすstressは熱収支分布図とは異った分布であるが,最大約0.4N•m-2(=•4dyne•cm-2)をこえる。この値は100mの厚さの海水を1日当り35cm•s-1の割合で加速する力,またはEkmanの輸送で表現すると8cm•s-1×100mの水の容積運搬速度に相当する。<br>(3) 海面のボーエン比(H/lE)を調べて見ると,黄海では0.8,黒潮域では0.4,更にその南方では0.1と云い具合に南に行くほど小さくなる傾向を示す。この事は大陸からの寒波は北方海域で,まつ(相対的に),気温が上昇し,その後で十分水蒸気の補給を受けると云い形で気団変質がおこっている事を意味する。<br>(4) 熱収支式の残余項は海洋の熱収束であるから,これを或る海域について積分した熱はこの海域へ運ぼれた海洋熱に相当する。この値と水温水平分布から海洋熱拡散係数が1×108cm2•S-1と評価された。<br>(5) 熱収支分布の形から,黄海に反時計まわりの循環流の存在が予測される。黄海に入る海洋熱はF=1.7×1013Wであるが,これが,もしも単一循環流だけによるものと見なすならば,その循環の平均速度はV1=10cm•s-1となり,黄海水の「滞留時間」はt1=160日,程度と評価される。
収録刊行物
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- 気象集誌. 第2輯
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気象集誌. 第2輯 54 (6), 382-398, 1976
公益社団法人 日本気象学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001206504565248
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- NII論文ID
- 130007345121
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- ISSN
- 21869057
- 00261165
- http://id.crossref.org/issn/00261165
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- データソース種別
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- JaLC
- Crossref
- CiNii Articles
- OpenAIRE
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- 抄録ライセンスフラグ
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