熱収支方程式による下部対流圏温度の季節変化の計算

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タイトル別名
  • Calculation of Seasonal Variation in the Lower Tropospheric Temperature with Heat Budget Equations

抄録

大気層でのエネルギー収支方程式と地球表面層でのエネルギー収支方程式の各項を大気外日射量,大気中層気温および地球表面温度の関数で,パラメータ化する.その際,2つの重要な仮定を与える.その1は,大気中について鉛直積分されたエネルギー流束の発散量は凝結熱の一次関数として表現されるとする.その2は,地球表面層に貯えられる熱の時間変化は,地球表面の温度の時間変化に比例する(ただ海と陸では,その比例係数が異なる)とする.パラメータ化された,両エネルギー収支方程式を連立させると,閉じた系が得られ,大気中層または地球表面の温度が時間に関して,非同次一階線型微分方程式として表現される.非同次項は大気外日射量の関数であり,それに含まれる常数項は,大気アルベド,地球表面アルベド,地球表面の含水率などからなる.この微分方程式を,初期条件として大気中層または地球表面温度=0°Kを与えて,時間積分すると,温度は1,2年間急上昇し,数年後には定常な季節変化を持った温度が得られる.大気中層または地球表面の温度のどちらかが初期値問題として数値計算されれば,もう一方の温度は一次方程式の解として得られる.具体的には,各緯度の海上と陸上について,地表面と500mb面の温度の季節変化が計算されるが,その結果は,特に次の点で,観測結果とよい一致を示す.つまり,a)冬にゆるやかに降温し,春に急昇温する特徴的季節変化.b)低緯度と高緯度の温度の季節変化の特徴的な差異.c)大気外日射量と温度の季節変化の時間位相差.<br>各温度の雲量や地球表面アルベドに対する感度,はじめての降雪で陸地のアルベドが急変したときの温度の反応が数値計算で示される.<br>大気外日射量の季節変化に対する温度の季節変化の時間位相の遅れが,解析的に解かれる.その結果によると,地球表面温度の時間位相の遅れは,海洋度には依存するが,地球表面アルベドにはよらない,つまり緯度にはよらない.大気中層の温度の時間位相の遅れは,海洋度とともに地球表面アルベドつまり緯度にも大きく依存し,地表面アルベドが大きい高緯度では位相遅れは少さくなる.

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参考文献 (14)*注記

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