華中における春の長雨の気候学的特徴とそのメカニズム

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  • Climatological Aspects and Mechanism of Spring Persistent Rains over Central China
  • Climatological Aspects and Mechanism of

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抄録

本研究は、主に降水量の観測データおよび850hPaにおける等圧面高度、風、気温、相対湿度の客観解析格子点データの5日平均の平年値を用いて、華中における春の長雨(SPR)に関連する大規模な循環場の特徴を調べた。また、SPRの気候学的な成因の物理的解釈を提案した。<br>SPRは2月の終わりに開始し、5月の始めまで続く。SPR期の下層の平均場において揚子江中下流域以南の地域(中国南部)で南西の風が卓越している。この下層の南寄りの風は中国南部、インドシナ半島と南シナ海に限られている。中国南部における下層の南寄りの風の出現はSPRの開始とよく対応しており、華中への水蒸気輸送とそこでの水蒸気収束に大きく寄与している。したがって、この下層の南寄りの風はSPRに重要である。<br>850hPaにおける等圧面高度、気温、風の場の季節進行から、下層の南寄りの風は、インドシナ半島からフイリピン東方の西部北太平洋付近にかけての下層の東向きの気温傾度に関連する西向きの気圧傾度に対する地衡風平衡の結果であることが分かった。この東向きの気温/西向きの気圧傾度は3月と4月に最大であり、インドシナ半島付近とフィリピン東方の西部北太平洋での昇温のずれによって生じるものである。インドシナ半島からフィリピン東方の西部北太平洋にかけての下層の気温と地表からの顕熱フラックスの季節変化が似ていることから、2月から4月におけるインドシナ半島付近の地表からの顕熱フラックスによる加熱が東西の熱的コントラストの主な原因であると考えられる。<br>年々変動においても、SPRと上に述べた東向きの気温/西向きの気圧傾度の間に99%有意水準を超える非常に高い相関が確認された。季節変化、経年変動におけるSPRと東向きの気温傾度/西向きの気圧傾度との間の密接な関係はインドシナ半島付近とフィリピン東方の西部北太平洋の間の東西の熱的コントラストがSPRにとって本質的であることを強く示唆している。

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