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タイトル別名
  • Kelvin Wave-CISK Controlled by Surface Friction
  • Kelvin Wave-CISK Controlled by Surface Friction:A Possible Mechanism of Super Cloud Cluster Part 1:Linear Theory
  • Kelvin Wave CISK Controlled by Surface
  • スーパークラスターのメカニズム Part I:線形論
  • A Possible Mechanism of Super Cloud Cluster Part I: Linear Theory

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抄録

スーパークラスターの励起・維持機構を理解するためのステップとして、ケルビン波の不安定に対する地表摩擦の効果、および対流活動による熱放出量の鉛直分布の適切な条件について議論する。本論文(Part I)では対流雲の集団効果としての熱放出量を摩擦層上端での鉛直速度に比例すると仮定し、上昇域で加熱、下降域で冷却が起こる線形モデルに対して固有値問題を解いた。上述のパラメタリゼーションを用いる限り、地表摩擦の効果はスーパークラスターの理解に不可欠であることが示唆される。本論文は、地表摩擦の重要性という点でWang(1988)の研究に沿うものである。<br>3つの不安定モードに注目する。1つは下層での熱放出量が大きな場合に励起される停滞性の重力不安定モードで、第1種条件付不安定(CIFK)に相当する。他の2つは、性質の異なる不安定なケルビンモードである。1つは、上層での熱放出量がある程度大きな場合に励起され、地表摩擦の効果は不安定化に必要ではないケルビンモード(NFK; Non-Frictional Kelvin mode)、もう1つは、下層で適度の熱放出がある場合に地表摩擦の存在下で励起されるケルビンモード(FK; Frictional Kelvin mode)である。NFKは最大成長率(10-3s-1のオーダー)がスケールの小さなところに現れる不安定モードで、位相速度は10ms-1以上である。それに対して、FKは、成長率が10-5s-1のオーダーで波長依存性が小さく、かつ10ms-1程度かそれ以下の現実大気のスーパークラスターに近い位相速度をもつ。FKにおいては、地表摩擦の効果によって境界層での収束が自由大気中の収束よりもわずかに東に位相がずれるという特徴が本質的である。<br>NFKは地表摩擦を考慮していない従来の多くのwave-CISKの研究で議論されてきた不安定モードに対応し、対流のパラメタリゼーションがよくないために生じた不安定モードであると考えられる。NFKを扱っている限り、10ms-1以下の位相速度や大規模な卓越スケールなどのスーパークラスターの重要な特徴を説明することは難しいと考えられる。それに対して、FKの特徴は、10ms-1以下の位相速度や成長率の波長依存性が小さい点など、従来のスーパークラスター(NFK)の議論において指摘されてきた主な問題点を解決できる可能性を示唆している。地表摩擦の有無を考慮した本論文の線形論の結果は、今後、水蒸気などを含む非線形モデルによる数値実験を行う上での基礎を与えることが期待される。

収録刊行物

  • 気象集誌. 第2輯

    気象集誌. 第2輯 75 (2), 497-511, 1997

    公益社団法人 日本気象学会

被引用文献 (3)*注記

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参考文献 (126)*注記

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