1979年から1988年までの熱帯太平洋の海上風についてのインド物理学研究所の大気大循環モデルによるシミュレーション

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  • Simulation of Surface Winds in the Tropical Paciffic during 1979-1988 by an AGCM at Physical Research Laboratory (PRL)

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抄録

大気大循環モデルによってシミュレーションされた熱帯太平洋の地上風の季節変化と大規模低周期変動について調べる。観測された海面水温を与え大気大循環モデルを1979年から1988年まで10年間積分し、その結果をNCEPの再解析結果と比較した。<br>大気大循環モデルは年平均および季節変化に関する気候学的特徴をよく再現している。南太平洋の収束帯の季節変化の振幅は観測と同程度である。年々変動に関しては、2度にわたる昇温現象(1982-83および1986-87)と1度の降温現象(1988)をよく表現している。風偏差の最初の二つの経験的直交関数とその主成分は、昇温に伴う西風偏差や1982-1983の西風偏差の東方伝播、第一モードにおける熱帯東太平洋上の収束など、大気海洋相互作用の主な特徴をよく再現している。風偏差は1986-87には東進せず、1982-83の方が1986-87より大きかった。このように、モデルは異なる昇温現象をよく再現している。風偏差と降水偏差の主成分は相関がよいこともわかった。観測とモデルの降水偏差の同時相関はたいへん高く第一第二モードとも0.93であった。それゆえ、積雲対流加熱の低週期変動をよく表現しているので地上風の低周期変動の再現に成功したと考えられる。<br>この大気大循環モデルの明らかな欠点は西風の極大位置が正確でないことおよび経験的直交関数の第一モードにおける南西風偏差の西側への広がりが足りないことである。また、1月のペルー沖の南風は弱く西経170度に達していない。大気大循環モデルの結果を考察するため、2つのタイプの加熱(モデルで再現された降水偏差および降水偏差と海面温度偏差の総和)に対する松野・ギル型の線形応答と比較した。降水および海面水温偏差によって強制された線形応答は大循環モデルの西太平洋における誤差が地表面乱流フラックスの扱いの不十分さに関連していることを示唆している。

収録刊行物

  • 気象集誌. 第2輯

    気象集誌. 第2輯 77 (5), 1083-1108, 1999

    公益社団法人 日本気象学会

参考文献 (73)*注記

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