今後のパルプ研究の展望について

  • 松本 雄二
    東京大学大学院 農学生命科学研究科 生物材料科学専攻 木材化学研究室

書誌事項

タイトル別名
  • Perspective and Current Research Trend of Pulping Research
  • コンゴ ノ パルプ ケンキュウ ノ テンボウ ニ ツイテ

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抄録

リグニンを特徴付けるいろいろな指標の中で,パルプ製造工程と深く関係するものとしては,リグニン量のほかに,β―O―4構造の量,その中でもerythro型β―O―4構造の量,芳香核構造,LCC(多糖とリグニンの結合)の種類と量が考えられる。β―O―4構造はリグニン中の最も主要な結合様式であり,この構造がアルカリ中で開裂することによってリグニンの低分子化,脱リグニンが引き起こされると考えられている。その際,β―O―4構造の二つの立体異性体erythro型とthreo型のうちerythro型の方が開裂反応を受けやすいことが知られている。一方,芳香核構造は縮合反応の起き易さや,漂白反応の際の酸化反応の受けやすさに影響する。LCCはリグニンを細胞壁中にとどめる役割を果していると考えられる。本研究室では広範な樹種のリグニン化学構造の多様性を調べてきた。本稿では,それらのデータの中から,パルプ製造と関係するリグニン量,β―O―4構造の量と立体異性体比,芳香核構造の関係について紹介し,また最近見出した興味深いリグニン反応機構について紹介する。

収録刊行物

  • 紙パ技協誌

    紙パ技協誌 61 (7), 769-772, 2007

    紙パルプ技術協会

被引用文献 (5)*注記

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参考文献 (5)*注記

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