騒音・低周波音の評価方法と対応

  • 青木 雅彦
    日東紡音響エンジニアリング株式会社 ソリューション事業部

書誌事項

タイトル別名
  • Evaluation and Countermeasure of the Low Frequnecy Noise Problem in a Factory
  • ソウオン ・ テイシュウハオン ノ ヒョウカ ホウホウ ト タイオウ

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抄録

平成23年度の統計によると,全国の地方公共団体が受理した工場・事業場に係る苦情件数は騒音が4761件,低周波音は83件であった。<BR>一般に人が耳で聞くことができる可聴範囲は20Hz~20,000Hzと言われている。100Hzより低い周波数の音を低周波音と呼ぶ。<BR>工場から発生する騒音は一般に用途地域,時間帯で規制値が決められているが,低周波音には規制値がなく,代わりに環境省から“心身に係る苦情に関する参照値”と“物的苦情に関する参照値”が1/3オクターブバンドの周波数毎に示されている。騒音の測定点は一般に敷地境界であるが,低周波音の測定点は必ずしも敷地境界ではない。<BR>現場測定では,低周波音は音の波長が長いため,測定点を移動すると,地面,壁等からの反射音の影響で干渉が発生し,測定値が変動する場合が多い。また,屋外の測定値と室内の測定値では周波数特性が変わるため,注意が必要である。<BR>騒音環境を改善するための調査では,各発生源から敷地境界,民家への影響を推定する必要がある。基本的には各発生源近傍の測定値から距離減衰等を考慮し,敷地境界への影響を推定することになるが,工場のように多数の騒音源がある中で,騒音計だけを使って影響を検討することは実際にはほとんど不可能である。<BR>そこで我々は音源探査とシミュレーションを組み合わせた調査・検討を実施している。<BR>我々が開発したノイズビジョンは球形のセンサー部にマイクロホンが31個,カメラが12個装着されており,音の到来方向を写真に重ねて表示することができる。<BR>音源探査で騒音の伝搬状況を可視化によって把握した後は,我々が開発した騒音予測ソフトウェアであるジオノイズを使って,各騒音源から敷地境界への伝搬経路を推定し,その影響を予測する。この予測モデルを修正して各種の対策案を設定することで,事前に対策効果を推定することができる。<BR>多数の騒音源があり,伝搬経路も複雑な工場の騒音対策は難易度が高いテーマであり,音源探査とシミュレーションによって複雑な騒音状況をわかりやすく“見える化”することは,低周波音を含む騒音の環境改善に向けて効果的かつ重要な手法だと考えている。

収録刊行物

  • 紙パ技協誌

    紙パ技協誌 67 (12), 1382-1386, 2013

    紙パルプ技術協会

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