煮熟剤による竹紙の物性への影響

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  • シャジュクザイ ニ ヨル チクシ ノ ブッセイ エ ノ エイキョウ

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抄録

<p>竹紙は中国唐代(618-907 AD)から漉かれたとみられ,丈夫で平滑なため,書画と印刷物などによく用いられている。中国の古籍に用いる紙の約7割が竹を原料としているとされているが,日本も中国から漢籍や高級な素材として輸入してきた。しかし現在生産されている竹紙は品質が低く,今後の文化財保存や修復のために当時用いられていたのと同様な良質な竹紙の再現が期待される。</p><p>竹紙の伝統的製造法には竹を発酵させるのみでパルプ化する生料法と発酵後アルカリを用いて煮熟してパルプ化する熟料法がある。本研究では中国江西省鉛山県で発酵処理済みの孟宗竹粗繊維を入手し,異なる3種類のアルカリ(苛性ソーダNaOH,ソーダ灰Na2CO3,石灰Ca(OH)2)を用いて煮熟した。煮熟速度は苛性ソーダが一番早く,石灰が最も遅かった。長時間煮熟した石灰煮の収率84%(L84)では紙の耐折強さが大きく低下していた。</p><p>本研究の目的は製造した5種の竹紙の耐久性を検討することである。竹紙試験片に低濃度や高濃度のドウサ溶液(膠と明礬の混合液で日本画用の表面サイズ)を塗布し,8週間湿熱劣化(80℃+65%rh)させた。色,pH,強度試験(耐折強さと引裂強さ)の変化を測定した。今回抄紙した竹紙の初期pHは8.7~9.2と高く,高濃度のドウサを塗布してもpHは7.9以上を保っていた。湿熱劣化処理による紙の強度低下は小さいものであった。湿熱劣化処理による変色速度は同一pHで比較すると石灰の紙(L94,L84)が低かった。以上の結果より今回用いた粗竹繊維は苛性ソーダ或いはソーダ灰で煮熟するのが良いと結論した。</p>

収録刊行物

  • 紙パ技協誌

    紙パ技協誌 72 (1), 85-91, 2018

    紙パルプ技術協会

参考文献 (7)*注記

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