マウス1細胞期胚のクロマチン構造へのリンカーヒストン変異体の関与

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • The involvement of linker histone variants in the chromatin structure in mouse zygotes

抄録

<p>【目的】受精後の1細胞期胚は体細胞と比較して非常に緩いクロマチン構造を有することが知られている。リンカーヒストンはクロマチンの高次構造に関与し,発生に必要なことが知られている。哺乳類では全部で11種類のリンカーヒストン変異体が報告されているが,1細胞期胚の緩いクロマチン構造におけるこれらリンカーヒストン変異体の機能は明らかになっていない。そこで本研究ではマウス1細胞期胚のクロマチン構造へのリンカーヒストン変異体の関与について解析を行った。【方法・結果】まずRNAseqのデータを用いて着床前初期胚発生におけるリンカーヒストン変異体の発現量変化を解析した。その結果,H1fooは1細胞期胚で極めて高く発現しており2細胞期胚になると発現量が急激に減少していた。一方体細胞で広く発現している体細胞型リンカーヒストン変異体(H1b, c, d, e)は1細胞期胚で低発現しており,着床前初期胚発生後期にかけて発現量が増加していた。1細胞期胚においてH1fooが高発現している意義を調べるため,siRNAを用いてH1fooのノックダウン(KD)を行ったところ,H1foo をKDした1細胞期胚は雄性前核における緩いクロマチン構造が失われており,また2細胞期胚への卵割のタイミングが遅延していた。次に1細胞期胚において体細胞型リンカーヒストン変異体(H1b, c, d, e)の発現量が低いことの意義を調べるため,1細胞期胚におけるこれら変異体の過剰発現を行った。その結果コントロール胚と比較して,体細胞型リンカーヒストン変異体,なかでもH1dを過剰発現したすべての胚が1あるいは2細胞期で胚発生を停止していた。またH1dを過剰発現した1細胞期胚において,DAPI染色を行った結果,一部で異常に凝集した前核が観察された。これらの結果より,1細胞期胚ではH1fooが高発現し,他の体細胞型リンカーヒストンが低発現していることにより,緩いクロマチン構造が形成されていることが示唆された。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001277355824256
  • NII論文ID
    130007719358
  • DOI
    10.14882/jrds.112.0_p-52
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ