V1a受容体欠損マウスで観察される分娩期の生殖機能異常

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  • Reproductive abnormality during the parturition observed in V1a receptor deficient mice

抄録

<p>【目的】下垂体後葉ホルモンは,雌性生殖機能,特に妊娠や分娩に深く関与することが知られているが,その機序にはいまだ不明な点が多い。例えば,オキシトシン(OT)とその受容体は分娩への関与が強く示唆されるが,遺伝子欠損マウスでは分娩異常が観察されず,何らかの因子が代償していると考えられる。バソプレッシン(VP)はOTに類縁のペプチドホルモンで,全9アミノ酸中で2つのみが異なる。また,受容体も相同性が高く,3種類のVP受容体(V1a,V1b,V2)のうち,V1a及びV1b受容体はOT受容体と同様に主にGqタンパク質に共役する。従って,VPとその受容体も生殖生理に何らかの影響を及ぼす可能性が考えられたため,V1a受容体欠損マウスでの雌性生殖機能解析を行った。【方法】V1a受容体欠損マウスの雌性生殖機能をビデオ撮影により詳細に観察することで,V1a受容体欠損の影響を調べた。また,V1a受容体欠損マウスの子宮筋機能を解析するため,マグヌス法による等張性収縮実験を行った。【結果および考察】V1a受容体欠損マウスでは,生殖行動(射精行動の潜時)の明確な異常は観察されなかった。しかしながら,有意な分娩遅延と産仔数の減少が観察された。分娩遅延は胎仔と母体の両方に起因する可能性があるが,野生型と遺伝子欠損動物のヘテロ交配実験により母体側に起因することがわかった。子宮ではOT受容体は分娩時に向けて遺伝子発現が亢進する。一方で,V1a受容体発現は,非妊娠時,妊娠分娩時期を通じ大きな変化は見られなかった。分娩後すぐの子宮を用いたマグヌス法による等張性収縮実験により,V1a受容体欠損マウスでは,子宮の輪状筋の最大収縮力が有意に低下していることが観察された。一方で,縦走筋では大きな変化は観察されなかった。以上の結果から,V1a受容体欠損マウスにおいて観察された分娩遅延は,子宮筋の特に輪状筋の収縮減弱が関与している可能性が示された。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001277360869248
  • NII論文ID
    130007719333
  • DOI
    10.14882/jrds.112.0_p-70
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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