宇宙ステーションでの実験を想定した密閉容器内でマウス初期胚を培養する方法の開発
書誌事項
- タイトル別名
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- Development of new embryo culture method in a closed plastic tube assuming at experiment in a Space Station
説明
<p>【目的】人類の宇宙開発が進む中,宇宙空間で哺乳類が正常に生殖を行えるかの可否は人類の宇宙進出において重要な知見となる。我々は実際に宇宙ステーションを利用してマウス初期胚の培養を行う実験を計画しているが,一般的な哺乳類初期胚の培養方法は宇宙で行うことができない。胚の扱いに不慣れな宇宙飛行士が無重力空間で実施するため,耐圧性がありガス透過がない密閉容器で胚を培養することになるだろう。そこで我々は,あらかじめ必要なガスを取り込んだ培地(以下平衡化培地)を用い,完全密閉容器内で胚を培養する方法の開発を試みた。【方法】本実験では密閉容器として蓋の周りをパラフィルムでシールしたアシストチューブを用いた。最初に,培地を入れ蓋を緩めたアシストチューブをCO2インキュベーター内に入れ,培地のCO2分圧の変化を経時的に測定した。次に,ICRあるいはB6D2F1マウスのIVFを行い,1細胞期胚を平衡化培地の入ったアシストチューブに入れ密封し,恒温槽内で72時間または96時間培養した。72 時間の培養で得られた胚は子宮へ移植し産仔率を,96 時間の培養で得られた胚は胚盤胞への発生率を算出し,得られた胚盤胞は免疫蛍光染色により,全細胞数およびICMとTEの細胞計数を行った。【結果と考察】インキュベーターに入れた培地のCO2分圧は約24 時間で平衡化することがわかった。この培地を用いて密閉容器で培養した胚の胚盤胞までの発生率はどちらの系統でも90%以上であり対照区のディッシュでの培養と変わらなかった。また,胚盤胞のICMとTEの細胞数も対照区と差はなかった。胚移植は現在実施中だが,すでに密閉容器培養から産仔を得ることに成功している。これらの結果から,宇宙ステーションで胚を培養する実験は,予め平衡化した培地を使うことができれば実現可能であることが明らかとなった。また,この方法は温度のみの維持で培養できるため胚の輸送にも適しており,宇宙実験だけでなく地上での発生工学の研究や生殖補助医療にも応用できると思われる。</p>
収録刊行物
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- 日本繁殖生物学会 講演要旨集
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日本繁殖生物学会 講演要旨集 112 (0), P-66-P-66, 2019
公益社団法人 日本繁殖生物学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001277360871936
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- NII論文ID
- 130007719341
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可