ブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)の医療応用

抄録

<p>朝日新聞2015年11月11日朝刊記事によると,厚生労働省専門家会議で,ヒトの身体に装着して歩行能力を高める補助装置「ロボットスーツHAL」を全身の筋力が低下した難病患者のための医療機器として承認することが了承された.肢体不自由者の政府による支援の一歩が始まったと言えよう.</p><p>この分野の研究では米国John Donoghue 氏のグループの一連の研究が先駆的であった.一方,国内においても,株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)川人光男氏のグループを中心として,EEG と機能的MRI(fMRI)を用いた大規模なBCI の研究を進めている.</p><p>Donoghue 氏が設立したブラウン大学脳科学研究所は,2001年には,大学からスピンオフし,パイロット臨床試験のためにCyberkinetics 社,Cyberkinetics Neurotechnology Systems となり,現在はBrainGate 社として活動を行っている.当初,ブラウン大学で開発されたのは,脳に剣山型の微小電極を埋め込み,神経信号を直接侵襲的に取り出し,解析し,制御信号を送るものであった.</p><p>BCI の研究が人々の目を惹いたのは,2015年5月にNature に掲載されたBrainGate2のプロジェクトの記事であろう.Nature のこの記事によると,1997年に脳卒中で身体麻痺を起した患者が,2005年にBrainGate2の埋め込み手術を受けた.この患者はロボットアームを操作し,46% の成功率でスポンジボールを拾い,66% の成功率でコーヒーボトルを握り口に持ってゆくことに成功した.さらに2006年に麻痺状態になり6年後にこの電極埋め込み手術を受けた患者は,上述のロボットアームを介して62% の成功率でスポンジボールを拾うことが可能となった.</p><p>しかしながら,微小とはいえ電極を脳に埋め込む侵襲の計測装置は様々な問題を抱えており,我々の研究で現在用いている,頭皮上からの脳波を計測する方法が今後重要になると思われる.</p>

収録刊行物

  • 知能と情報

    知能と情報 28 (3), 79-79, 2016-06-15

    日本知能情報ファジィ学会

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