中国・長白山天池の大規模地すべりに伴う津波の数値解析

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  • Numerical simulation of the landslide-induced tsunami at the Tianchi Lake of Chiambai Volcano in Chaina

抄録

1. はじめに<br> 長白山(朝鮮名:白頭山、標高2744m)は中国と北朝鮮の国境に位置する火山で、山頂には天池と呼ばれるカルデラ湖を有している。長白山はこれまで噴火を繰り返してきた活火山であり、15世紀以降、4度(1413年,1597年,1668年,1702年)の噴火が観測されている。また、長白山山頂周辺には複数の地すべり跡が確認されており、地すべり災害の発生も危惧されている。地すべりは、火山活動などによる地震によって誘発される可能性があり、近年の長白山の火山活動の活発化に伴ってそのリスクは増大しているといえる。さらに、半径約4kmの天池に地すべりが突入した場合、巨大津波を発生させる可能性もあり、甚大な被害を及ぼす広域災害に発展する危険性もある。しかしながら、長白山における火山災害や地すべり、土石流などに関する情報は乏しく、ハザードマップのような具体的な災害情報の公開はされていない。そこで本研究では、著者らが開発をしてきた地すべり・津波統合モデルを利用して、長白山天池周辺で地すべり津波が発生した場合のシミュレーションを実施し、観光施設などに対する影響を評価する。<br>2. 地すべりの想定シナリオの設定<br> 天池の南東側で確認された地形の亀裂を参考に円弧すべりを仮定し、2つのシナリオを設定した。一つ目は、頂上から水面まで崩壊すると仮定するシナリオ1、二つ目は頂上から湖底面まで崩壊すると仮定する最大想定としてのシナリオ2である。これらのシナリオに基づき、楕円体形状で地形の剥ぎ取りを行った結果、シナリオ1における剥ぎ取り体積は0.057㎢、シナリオ2では0.17㎢となった。<br>3. 数値シミュレーションの結果<br> 上記の想定シナリオに基づき、地すべりとそれに伴う津波のシミュレーションを実施した。その結果、シナリオ1・2ともに、天池からあふれ出した巨大な津波が河川を伝わり、観光施設まで襲来することがわかった。特に、天池の水が流れ出る付近にある展望台には、シナリオ1で浸水深17m、シナリオ2で30mの津波が襲来する結果となった。また、多くの人が集まる下流の観光施設でも、シナリオ1で浸水深10m、シナリオ2で29mの津波が襲来する。これらの結果より、もし天池で地すべり起因の津波が発生した場合、下流の観光施設などに壊滅的な被害が生じることが明らかとなった。<br> 長白山における地すべり津波に関する検討はこれまでされてこなかったが、本研究によってそのリスクが明確となった。今後はハザード評価をもとに巨大災害に対する避難想定などの防災対策を検討していく必要がある。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288040799104
  • NII論文ID
    130007411897
  • DOI
    10.14866/ajg.2018s.0_000086
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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