神経眼科領域におけるeponymの現況

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  • The Current Use of Eponyms in the Field of Neuro-ophthalmology

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抄録

【目的】1950年から2016年までの神経眼科論文におけるeponym(エポニム)の使用実態を検証する.<br>【方法】神経眼科の主要専門書を参照してエポニムを選定,文献データベースPubMed収録論文(1950-2016)を対象として,タイトルにエポニムを含む論文を検索した.Web of Science,日本眼科学会雑誌(日眼会誌)を補完的に用いた(2017年11月).<br>【結果】エポニムを主題とした論文数は,46,896件(Alzheimer disease),41,918件(Parkinson disease)を最上位,論文数0件を最下位としてエポニムごとに大きく変動した.ランキング100位(論文数36件)までを神経眼科エポニムクラシックス(NOEC)と定義すると,その発祥は1760年(Charles Bonnet syndrome)を最初に1979年(Susac syndrome)を最後として1900年前後にピークをもつ集中分布を示す.1980年以後に誕生したエポニムはない.NOES発祥国はドイツ(n=22)を筆頭に米国,英国,フランスの順である.1950年から2016年までの年次別論文数は持続的に増加するのが大多数だが,Schilder disease,Wegener granulomatosisのように1970年代から1980年代のピークを境に長期低落傾向を示す事例も少なくない.また,Devic disease,mongolismのように,病因解明を機にdescriptive nomenclaureの使用に切り替わってエポニム使用が減少した事例がある.エポニムの表記には,大部分の論文で所有格と非所有格が併用されているが,その割合は各エポニムで偏りがある.注目に値するのは,1990年頃から非所有格表記が優勢に転じた事例が少なくないことである.日眼会誌(1897年創刊から2916年までの120年間)においては,900論文のタイトルにエポニムが使われた.神経眼科領域ではレーベル遺伝性視神経症,ベル現象,テノン嚢が目立つ.和文論文にユニークな敬称「氏」の付記は,明治から昭和戦前までごく一般的であったが,戦後は敬称を省く習慣になった.<br>【結語】エポニム使用は功罪相半ばするが,古くから定着した事例は依然として汎用される傾向がある.

収録刊行物

  • 神経眼科

    神経眼科 35 (2), 176-186, 2018-06-25

    日本神経眼科学会

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