オオカナダモ紅葉において誘導されるクロロフィル分解産物の構造

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  • Structure of chlorophyll catabolite induced in autumn colored leaves

抄録

<p>1. 序論</p><p>紅葉は主に落葉樹の葉が落葉前に示す葉の色調の変化を指し,植物の老化過程における代表的な現象として知られている.この現象は気温の低下や日照時間の減少などの環境の変化により誘導され,葉の色を茶色や赤色,黄色に変化させ細胞死に至る.Apoptosis(αποπτοσισ)とは,ギリシア語で「落葉」を意味する言葉を語源としており,現在,植物のみならず,動物においてもそのメカニズムについて研究が進められている.代表的な紅葉現象を示すモミジでは,赤色を示す機構には,糖類の蓄積,クロロフィル分解,アントシアニン合成が必要とされている1).糖類の蓄積はクロロフィルの分解やアントシアニンの合成に先立って起こることが複数の植物種で確認されている2),3).また,クロロフィルの分解経路はオオムギ (Hordeum vulgare) の葉から発見された非蛍光クロロフィル分解物 (NCC) によりその存在が明らかにされ,植物の老化に従い NCC が増加することが報告されている4).赤色クロロフィル分解物 (RCC) であり蛍光クロロフィル分解物 (pFCC) として報告された初めての物質である pheophorbide a はクロロフィル分解経路の重要な中間体として確認されている5-7).</p><p>Griffin は Quercus alba 及び Rhus glabra の緑葉における葉脈切断実験を行い,葉脈の切断部分より上部においては糖類とアントシアニンの蓄積が確認されたが,幹とつながった葉脈が残っている部分ではこのような蓄積が起こらないことを報告している8).また,幹の環状除皮は Cornus controversa における紅葉の誘導の効果的な手法であると示されている9).村上らは Acer saccharum の幹の環状除皮を行い,その上部の幹についた葉における炭化水素の蓄積とアントシアニンの合成が誘導され,下部では蓄積が起こらないことを報告している10).</p><p>しかし,紅葉誘導メカニズムは,紅葉が自然界においては年に一度しか起こらないこと,気候のバラツキなどによる自然環境の変動によって大きく左右されることなどから,その詳細については未解明な部分が多く,実験室内で季節を問わず,短時間で再現性良く紅葉誘導できる実験系の開発が求められている.そのため,我々はオオカナダモ (Egeria densa) で誘導される紅葉の機序解明を試みた.</p><p>2. スクロース培地によるオオカナダモの葉の紅葉誘導系におけるクロロフィルの分解とアントシアニンの合成に対する茎の影響</p><p> オオカナダモの茎から切り離した緑葉を 0.1 M スクロース中,7-10日連続照明下で培養した場合,クロロフィルの減少とアントシアニンの合成による赤色への変化が観察された.同様の葉をスクロース溶液ではなく水のみを用い培養した場合,クロロフィルの減少のみ観測され,採取された葉は黄色に変色した.全糖類量はスクロース培地内で培養した切断葉内で増加し,水中ではごく微量のみ増加した.同様に,茎が残存している葉を培養した場合,0.1 M スクロース中ではアントシアニンを蓄積しなかったものの,糖類の増加とクロロフィルの分解は確認された(Fig.1).これらの結果から,茎はスクロース溶液培養条件下で葉のアントシア</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288045384448
  • NII論文ID
    130007399528
  • DOI
    10.24496/tennenyuki.56.0_poster27
  • ISSN
    24331856
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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