沖縄産Agelas属海綿から単離した新規ブロモピロールアルカロイドの構造

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タイトル別名
  • Structures of New Bromopyrrole Alkaloids from an Okinawan Marine Sponge Agelas sp.

抄録

<p>ブロモピロールアルカロイドは、窒素含有率の高い特異な化学構造をもち、多様な生物活性を示す海洋天然物である1)。このうちagelastatin A2)は特異な四環性構造のブロモピロールアルカロイドであり、in vitroで顕著な細胞毒性や腫瘍細胞の転移抑制活性を示すことから、医薬リードや全合成研究のターゲットとして注目されている3)。</p><p>当研究室では、Agelas属海綿に含まれるブロモピロールアルカロイドの探索研究を行っており、これまでに沖縄産Agelas属海綿(SS-162) から、11種の新規ブロモピロールアルカロイドを単離し、報告している4)。今回、SS-162の抽出エキスについて更なる探索を行い、ユニークな化学構造を有する5種の新規ブロモピロールアルカロイドagelamadin A-E (1-5) を単離したので、それらの構造ならびに生物活性について報告する。</p><p>1. 抽出・分離</p><p>沖縄県慶良間諸島で採取したAgelas属の海綿 (SS-162) のMeOH抽出エキスをn-hexane と90% MeOH aq. で分配した後、90% MeOH aq. 可溶画分をn-BuOHと水で分配した。得られたn-BuOH可溶画分を各種クロマトグラフィーで繰り返し分離し、新規ブロモピロールアルカロイドagelamadin A-E (1-5) を単離した(Chart 1)。</p><p> </p><p>2. Agelamadin A (1) およびB (2) の構造5)</p><p>Agelamadin A (1) は無色非結晶性固体として得られた。ESIMSにおいてm/z 805、807、809、811、および813に1:4:6:4:1の強度比でイオンピークが観測されたことから、分子内に4個の臭素原子の存在を推定した。HRESIMSより1の分子式をC23H26N10O3Br4と帰属した。1のIRおよびUVスペクトルでは、ピロールアミド由来の吸収が観測された{nmax1685 cm-1 (IR); lmax277 nm (UV)}。これらの結果から、1をブロモピロールアルカロイド二量体と推定した。</p><p>Agelamadin A (1) の1H-1H COSY、HMBC、およびROESYスペクトルを詳細に解析し、agelastatin様の四環性ユニット (N-1-C-15) と直鎖状ユニット (N-1’-C-15’) の存在を推定した (Figure 1A)。これらのユニットがC-10/C-15’間で結合することを、H-9/C-15’、H-10/C-11’、ならびにH-10/C-15’間のHMBC相関から明らかにし、1の平面構面をFigure 1Bに示した構造と帰属した。</p><p>Agelamadin B (2) の1D NMRは1のものと類似していたが、HRESIMSから、2は1より炭素原子1個と水素原子2個分少ない分子式、C22H24N10O3Br4をもつことが示唆された。各種2D NMRスペクトルを解析し、2の構造を1の11-O-デメチル体と帰属した(Chart 1)。</p><p> Agelamadin B (2) の相対立体配置をROESYスペクトルの解析から、Figure 2に示した配置と推定した。また、2のH-9/H-10、H-8/H-9、およびH-8/H-15間の結合定数をagelastatin A2)のものと比較したところ、それぞれが近似した値を示したことからも、2の相対立体配置が支持された。同様に、1の四環性ユニットに由来するプロトンの結合定数もagelastatin Aのものと同様の値であったので、1は2と同一の相対立体配置であることが示唆された。</p><p>Agelamadin A (1) およびB (2) の比旋光度は0であったため、1と2はラセミ体である可能性が考えられた。そこで、キラルHPLCに</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288045708288
  • NII論文ID
    130007399477
  • DOI
    10.24496/tennenyuki.56.0_oral40
  • ISSN
    24331856
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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