核呼吸因子-1発現減少による網羅的な遺伝子発現変動
書誌事項
- タイトル別名
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- Comprehensive genetic manifested fluctuation result from decrease in nuclear respiratory factor-1
抄録
<p>【目的】我々は現在までに低濃度の有機スズが核呼吸因子-1(nuclear respiratory factor-1;NRF-1)の転写活性を低下させ、AMPA受容体サブユニットGluR2の発現量を低下させることで神経細胞を脆弱化することを明らかにしてきた。NRF-1は、ホモ二量体化して働くユビキタスな転写因子であり、GluR2以外の遺伝子のプロモーター上にもその結合サイトが存在することが推定されているものの、その生理機能に関してはほとんど明らかになっていない。本研究ではNRF-1の詳細な機能を解明し、NRF-1発現量を変動させた際の毒性影響を明らかにすることを目的とした。</p><p>【方法】当研究室で作製した、Doxycycline(Dox)に応答してNRF-1のshRNAが発現するヒト胎児由来腎臓細胞(HEK293T)を用いてNRF-1発現低下が与える影響を評価した。NRF-1タンパク質の発現低下が確認されるDox添加48時間後の遺伝子発現量をDNAマイクロアレイにより網羅的に解析し、それにより抽出した遺伝子群をリアルタイムPCRにより解析した。NRF-1タンパク質発現量はウエスタンブロッティング法により評価した。</p><p>【結果・考察】マイクロアレイの結果より、NRF-1ノックダウンより一部の遺伝子発現変動が認められ、その中で我々はユビキチン結合酵素D1(ubiquitin conjugating enzyme E2 D1;UBE2D1)に着目した。NRF-1をノックダウンさせるとUBE2D1のmRNAの発現量が低下していたが、scrambleRNAを発現させる細胞株では観察されなかったことから、NRF-1の発現低下により起こる特異的なイベントであると示唆された。一方、プラスミドを用いてNRF-1を高発現させるとUBE2D1のmRNA発現量は上昇した。UBE2D1はユビキチン修飾系に関与しており、現在はタンパク質分解系との関与を解析中である。本研究の遂行により、有機スズによるNRF-1発現低下を介した毒性メカニズムの全貌を解明できると考えられる。</p>
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 45.1 (0), P-83-, 2018
日本毒性学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001288056305792
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- NII論文ID
- 130007432453
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可