食生活学習ふりかえり記述からみる「応用可能力」

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タイトル別名
  • The possibility of application on cooking through the students’ notes

抄録

<研究目的><br><br> 小学校の家庭科では、調理に関する基礎的・基本的な学習が行われ家庭生活で応用することが目指される。しかし、生活経験の少ない現代の児童は手順に則って学ぶことで精いっぱいであり、応用には至らない場合が多い。そこで、生活で応用することを目指しながらも、必要とされる知識・技能を問題解決力とともに学ぶことを重視し、「応用可能力」と名付けた。これは安彦(2008)が定義した活用型学習における活用Ⅱと応用の間に位置する能力と考えられ、習得した知識や技能を組み合わせるなどして、新たな知識を生みだす力であると考えた。<br><br> 昨年度の発表では、「野菜をいためる調理」において、食材のよさを活かすために食材によって下ごしらえや加熱の方法が異なるということを、児童が調理実験や調理実習を通して気付くような学習を工夫したところ、児童は自主的に応用しようという意欲を持つようになったことを報告した。<br><br> そこで、今年度は、「じゃがいも」を調理する学習活動を通して、「応用可能力」を獲得するプロセスについて検討した。<br><br> じゃがいもは、味が淡白であり、繊維質も少なく切り方、調理法、味つけ、他 の食材との組み合わせによって様々な料理を生み出すことができる。一方で給食などでもなじみのある食材でありながら、自分で調理したことのある児童は少ない。じゃがいもの調理法を学ぶことを通して応用可能力を習得する方法を試みた。<br><br><br><br><研究方法><br><br> 小学校6年生の授業「くふうしよう おいしい食事」において、じゃがいもについて体験的に学び、最終的には児童各自がじゃがいもを入れた料理を考え、調理することとした。<br><br> 対象児童は38名(男子22名、女子16名)である。<br><br> 本研究で分析対象としたデータは、第11時(調理実習1週間後)のふりかえり記述である。児童の記述はすべてデータ化し、カテゴリーを生成して分類した。<br><br><br><br><結果・考察><br><br> じゃがいもの調理を応用という点から検討すると、以下の3点が考えられた。<br><br> 1つ目は、「その後に活かせる知識や技能」である。「じゃがいものかたさをかなり気にするようになった。」、「じゃがいもをシャキシャキ、ホクホクにする知識が増えた。」、「味付けの量を考えるようになった。」、「火が通りやすいようにニンジンはうすく切った。」など、ゆで加減や味の加減、切り方等について、調理を一般化して捉えるような記述が多く見られた。<br><br> 2つ目は、「組み合わせておいしくする工夫」である。「粉ふきいもには、色々な食材を合わせた方がいい。」、「同じ食べ物でも違う味つけをしている人がいたのはおもしろい。」、「嫌いな食材も料理の仕方によって食べられるようになるというのが分かった。」など、食材や調理法の組み合わせ方によるおいしさの追究をするような記述が見られた。<br><br> 3つ目は、「調理への関心や意欲」である。「自分の好みな料理を見つけられたりするとうれしい。」、「じゃがいもって何にでも合うんじゃないか。」、「じゃがいもをもっとおいしくできないかな。」、「じゃがいもに対しての見方が変わった。」、「次はいためるという作業があるものを作りたい。」といった、料理のレパートリーを増やしていくであろう記述が多く見られた。<br> 以上の結果よりじゃがいもについて学ぶ中で、児童は調理の応用性を考え、おいしさを追究して調理を家庭で行うことに意欲的になると考えられる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288066828288
  • NII論文ID
    130007472572
  • DOI
    10.11549/jhee.61.0_18
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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