ジヒドロレスベラトロール型メラニン形成調節剤の分子設計

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タイトル別名
  • Molecular design of melanogenesis-controlled agents having the dihydroresveratrol skeleton

抄録

<p>1. 目的</p><p>Camellia oleiferaは食用油や化粧品の原料として使われるツバキ科植物である.2011年,Chenらによって,この植物からジヒドロレスベラトロールグルコシド(1)が単離・構造決定された(Figure 1).1 その構造には,4-ヘキシルレゾルシノールやカルドールなどの強力なメラニン形成調節剤に共通するレゾルシノール骨格が含まれている.したがって,1は新しいメラニン形成調節剤の開発のための基盤分子と位置付けられる.しかしながら,その全合成,誘導体合成および詳細な生理活性評価に関する研究は,現在まで行われていない.</p><p>皮膚におけるメラニンの過剰形成は,肝斑,日光黒子やそばかすなどの光老化の原因となる.メラニン形成は,銅を活性中心に含む酸化還元酵素のチロシナーゼがチロシンの水酸化とL-DOPAの酸化を触媒することで,開始される.また,生体内におけるメラニンの増減は,パーキンソン病やメラノーマと密接に関連する.したがって,チロシナーゼ阻害剤などのメラニン形成調節剤は,化粧品の機能性成分として利用される他,脳や腫瘍の生化学的な研究におけるツールとして重要な生理活性物質である.</p><p>そこで本研究では,天然物1の全合成およびその配糖体型誘導体2‐6の化学合成を行い,マウスメラノーマ細胞培養系を用いて,メラニン形成に対するそれらの活性を評価した.</p><p>2. 結果および考察</p><p>2.1. 天然物1およびキシロシド2の化学合成と生理活性評価</p><p>市販の3,5-ジヒドロキシベンズアルデヒドの水酸基をt-ブチルジメチルシリル(TBS)基で保護し,ジシリルエーテルに導いた.また,市販の4-ヒドロキシベンズアルデヒドのベンジル(Bn)化,ヒドリド還元,クロロ化およびトリフェニルホスフィン(TPP)処理により,ホスホニウム塩を得た.この塩と先に合成したジシリルエーテルを,Wittig反応によりカップリングし,得られたスチルベンの水素添加反応を行ってアグリコン7に導いた(Scheme 1).</p><p>無水酢酸とピリジンによりグルコースをアセチル化し,ピペリジン処理することでアノメリック位のアセチル基を選択的に除去した.得られたヘミアセタールを,トリクロロアセトニトリルおよび1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)を用いてイミデート化し,グルコースドナー8を合成した.</p><p>トリメチルシリルトリフラート(TMSOTf)をルイス酸に使った配糖体化反応より,アグリコン7とグルコースドナー8をカップリングし,配糖体9に導いた.テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)処理で,9のTBS基を除去し,さらにナトリウムメトキシドを用いたエステル交換反応により,全てのアセチル基を脱保護して目的の天然グルコシド1の全合成を達成した.なお,5段階を経由する本合成経路の収率は,24%であった.さらに,同様の合成経路を利用して,1の構造をさらに単純化したキシロシド2を5段階,収率40%で得た. </p><p>逆相HPLCを用いて,得られた1および2を精製し,マウスメラノーマ細胞培養系によりそれらの活性を評価した.その結果,天然物であるグルコシド1は,細胞毒性を示さない濃度でメラニン形成を阻害するこ</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288073380096
  • NII論文ID
    130007494377
  • DOI
    10.24496/tennenyuki.57.0_posterp57
  • ISSN
    24331856
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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