ラエビガチンAとEの合成

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Synthesis of Laevigatin A and E

抄録

<p>緒言</p><p> エラジタンニンはポリフェノールの一種で、多様な化学構造を有する化合物群である。この多様性は、単量体エラジタンニンの多量化によって拡大している。エラジタンニンの多量化は、本類の最も基本的な構成基であるガロイル基が、別のガロイル基部分とC–O結合を形成し、デヒドロジガロイル基(以下、DHDG基、図1)などのC–Oジガラートと呼ばれる構造を取ることによって起きることが多い。天然から得られたエラジタンニン類は、多様な生物活性を示すことが知られている。しかし、体系的に構造を変えた一連の誘導体を天然から得ることが非常に難しいため、構造・活性相関の解明が難しい。この難題の解決には有機合成が有用だが、そのためには多種のエラジタンニンを自在に合成できる方法論が必要である。この方法論を支える合成法のうち、多量化の主因になっているC–Oジガラートの合成法は、重要な課題である。私達は、昨年、幾つかのC–Oジガラートを合成できる統一的合成法を報告した1)。今回、C–Oジガラート構造を有するエラジタンニン、ラエビガチンA2)(1)をグラムスケールで合成し、本法の実用性を示した。また、類縁の二量体エラジタンニンであるラエビガチンE 3)(2)も合成したので報告する。</p><p>図1.ラエビガチンAとEの構造</p><p>合成計画</p><p> 1と2は共に、中国の薬用植物Rosa laevigata MICHX.(Rosaceae)の果実から奥田らが単離、構造決定した化合物である2,3)。1は、グルコースの2,3位酸素を架橋する(S)-ヘキサヒドロキシジフェノイル(HHDP)基とα-アノマー位にエステル結合したDHDG基を有するエラジタンニンである。エラジタンニンに含まれるグルコースは、1位に置換基を有する場合、ほとんどがβ体として存在する。したがって、1のα-グルコース構造は珍しい。2は、1の構造的特徴を保ちながら二量体になったエラジタンニンである。</p><p> 私達は1の合成を次のように計画した(図2)。化合物1のDHDG基はオルトキノンモノケタール3への、フェノール4を求核剤とするオキサマイケル付加/脱離と、続く還元的芳香環化を経て合成できる1)。4は、チオグルコシド5へ保護した没食子酸6をグリコシルエステル化させてα-選択的に構築する。5のグルコース2位酸素はHHDP基によってアシル化されているが、HHDP基が2,3位酸素を架橋しているため、7に示したようにカルボニル基の方向が限定され、β-グリコシルエステル化を起こす隣接基関与が生じないことを期待した。5は、8のジガラート部分の酸化的カップリングによるHHDP基形成と、続くフェノール部分のベンジル化によって得ることができる。</p><p>図2.ラエビガチンAの逆合成</p><p>ラエビガチンAの合成</p><p> ラエビガチンA(1)の合成を図3に示す。ジオール9を、カルボン酸10、EDCI塩酸塩、およびDMAPを用いてアシル化し、対応するジガラートを得た。次いで、メトキシメチル基を加水分解して得た11の二つのガロイル基部分を塩化銅(II)・ブチルアミン錯体を用いて酸化的にカップリングし4)、フェノール部分をベンジル保護して12</p><p>(View PDFfor the rest of the abstract.)</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288073794432
  • NII論文ID
    130007493605
  • DOI
    10.24496/tennenyuki.57.0_posterp26
  • ISSN
    24331856
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ