好酸球性消化管疾患の診断と治療

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タイトル別名
  • Recent progress in the research of Eosinophilic GastroIntestinal Diseases (EGIDs)
  • コウサンキュウセイ ショウカカン シッカン ノ シンダン ト チリョウ

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抄録

<p>好酸球性消化管疾患は,食物などに対するアレルギー反応が主因となって,好酸球が消化管壁局所へ異常に集積することで組織が傷害され,機能不全を起こす疾患の総称であり,好酸球性食道炎と好酸球性胃腸炎に分類される.その発症のメカニズムとしては,TSLP(thymic stromal lymphopoietin),IL-5やIL-13,Eotaxin3を含んだTh2系のアレルギー応答が重要な役割を果たしていると考えられている.厚生労働省研究班において行われた全国調査によって,我が国での臨床的特徴が初めて明らかとなり,2015年にはそれぞれの診断指針が作成された.この指針では確定診断に至るためには,種々の腹部症状に加えて,内視鏡検査によって消化管粘膜から生検を行ったうえで,上皮内へ多数の好酸球浸潤を証明することが必須項目として挙げられている.好酸球性食道炎では,内視鏡検査によって食道粘膜に特徴的な所見も認められる一方で,好酸球性胃腸炎では特異的な内視鏡所見に乏しいことも多く,むしろ末梢血中での好酸球数増加を認める頻度が高い.治療に関しては,想定される発症機序から栄養療法や薬物治療が中心となってくる.成分栄養剤,既定除去食や個別化除去食といった栄養療法の好酸球性食道炎に対する有効性を示す報告は多いものの,好酸球性胃腸炎に関する十分なデータは存在していない.薬物治療に関しては,まだはっきりとしたメカニズムは解明されていないものの,好酸球性食道炎に関してはプロトンポンプ阻害薬が有効なことが多く,現在薬物療法の第一選択となっている.プロトンポンプ阻害薬抵抗例や好酸球性胃腸炎に対しては,除去食かステロイドの投与が基本的な治療となってくる.我が国では2015年に好酸球性消化管疾患として両疾患が指定難病に認定されたが,現状では未だ両疾患症例の数も限定されているのが実情である.今後,我が国から質の高いエビデンスを発信する為にも,更なる知見集積が期待される.</p>

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 152 (4), 175-180, 2018

    公益社団法人 日本薬理学会

参考文献 (14)*注記

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