ソロモン諸島における真実委員会と 在来の紛争処理

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書誌事項

タイトル別名
  • Truth Commission and Indigenous Conflict Resolution in the Solomon Islands
  • Strained Relations between Global and Local Norms Relating to the Statement-Taking of Experiences under the Conflict
  • 紛争経験の証言聴取をめぐるグローバル/ローカルの緊張関係

抄録

<p>本稿の目的は、ソロモン諸島真実和解委員会の活動とガダルカナル島における在来の紛争処理に 注目して、ソロモン諸島における「エスニック・テンション」後の社会再構築過程にみられる課題、 とりわけ紛争経験の証言聴取をめぐって生じた緊張関係を解明することである。</p> <p>冷戦終結後に世界各地で頻発・長期化するようになった地域紛争への対応として、真実委員会に よる修復的な紛争処理が増加している。1998年から2003年に「エスニック・テンション」と呼ばれ る地域紛争を経験したソロモン諸島国でも、2010年から2012年にかけて真実和解委員会による社 会再構築の試みがみられた。本稿では、ソロモン諸島真実和解委員会が世界的な紛争処理の動向を 受けながら外部から導入された紛争処理としての側面があることを示す。次に、ソロモン諸島ガダ ルカナル島においてみられる在来の紛争処理について述べ、真実和解委員会の証言聴取活動との競 合関係を指摘する。最後に、真実和解委員会が公聴会の場面に伝統的な贈与儀礼を導入したことを 踏まえ、在来の紛争処理について考察する。</p> <p>本稿の考察から明らかになることは、以下の三点である。第一に、ソロモン諸島真実和解委員会 の中心的活動であった証言聴取について、ソロモン諸島の文化的規範と競合する問題があったこと。 第二に、証言聴取と文化的規範との競合を乗り越えるために、公聴会において贈与儀礼が執り行なわ れたこと。第三に、在来の紛争処理であるコンペンセーションを損失した財に対する補償や知識・情 報への対価として捉えるのではなく、継続的な関係構築のための手続きとして捉えるべきであること。 ソロモン諸島において真実和解委員会が証言聴取をしたことは、ローカルな規範に則った紛争処理と の間で葛藤を生じさせつつも、平和へと向かうポテンシャルを創発するものであったのだ。</p>

収録刊行物

  • 文化人類学

    文化人類学 82 (4), 509-525, 2018

    日本文化人類学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288083300480
  • DOI
    10.14890/jjcanth.82.4_509
  • ISSN
    24240516
    13490648
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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