戦後日本におけるダム事業の社会的影響モデル――被害構造論からの応用――

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タイトル別名
  • The Social Impact Model of Dam Projects in Postwar Japan: Applying the Theory of the Social Structure of Victimization
  • センゴ ニホン ニ オケル ダム ジギョウ ノ シャカイテキ エイキョウ モデル : ヒガイ コウゾウロン カラ ノ オウヨウ

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抄録

<p>本稿では,戦後日本のダム事業にともなう予定地住民および地域社会への負の影響について,経験的事実に基づくモデル化の試みをおこなった。その際,飯島伸子による被害構造論をベースに,局面区分を取り入れて整理した。それらはすなわち,①予定地の局面,②生活再建の局面,③水源地域活性化の局面,④事業見直しの局面,⑤事業中止の局面,という5局面である。これに3つの時代区分を重ねあわせ,ダム事業の社会的影響モデルとして提示した。</p><p>これを通じて,被影響住民に振りかかる問題は,水没補償や生活再建だけに終始するわけではないことを把握できる。予定地となった地域社会では人間関係の亀裂・行政不信,生活設計の問題などが生じるのみならず,1970年代半ば以降は補償交渉が長期化する傾向がある。移転後は地域レベルでの水源地域活性化がしばしば宿命づけられており,さらに事業見直しや中止に至った場合には,混迷化する状況に巻き込まれ,地域再生をめぐる課題とも向きあわなければならない。</p><p>このような長期間にわたる多面的かつ重層的な影響は,ひとたび地域社会が事業予定地として設定されることによってはじまる。そして,これを起点として被影響住民はしばしば数十年間にわたって翻弄され,人生時間の収奪という犠牲を払うのである。</p>

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