地図をめぐる知の交流――フィリピンの参加型森林政策を事例として――

書誌事項

タイトル別名
  • Knowledge Interaction in Map Making: A Case Study of Community Forestry in the Philippines
  • チズ オ メグル チ ノ コウリュウ : フィリピン ノ サンカガタ シンリン セイサク オ ジレイ ト シテ

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説明

<p>本稿ではフィリピンの参加型森林政策における地図を事例として,形式知と暗黙知の関係について議論を深める。これまで科学的管理などの形式知にもとづく国家政策は,地域が有する暗黙知を無力化すると指摘されてきた。たとえば,地図は多様な地域の文脈を記号化・形式化していくため,長らく国家統治の手段であった。対して参加型森林政策で国家が住民に権利を付与することになると,住民個人に対する地図作成の必要性が生じる。この場合,地図は国家統治の手段にとどまらず,住民の実情に即したものになるよう求められる。事例では現場森林官が,形式知だけでなく住民の森林利用の経緯や社会関係なども盛り込みながら住民個人の利用区画地図を作成していた。現場森林官は政策規定だけでなく,住民による問題解決を前提に業務を執行する。住民たちの実情に配慮する程度は現場森林官の経験上決まる暗黙知の領域といえる。つまり現場では,形式知と暗黙知が交流するなかで地図がつくられている。この知の交流は,地図をめぐる社会的関係のなかで獲得されていく,暗黙知の領域といえる。環境社会学における知のガバナンス研究は,階級性をふまえた異なる知の対立だけでなく,知の交流についても議論を深めていく必要があろう。</p>

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