血縁の有無がオランウータンの母子関係に与える影響
書誌事項
- タイトル別名
-
- Effect on behavior by blood relationship between maternal and child of orangutan
説明
<p>東京動物園協会の多摩動物公園では,育児放棄されたボルネオオランウータン(Pongo pygmaeus,以下オランウータン)のチェリア(メス,3歳)に代理母としてジュリー(52歳)をあてがうという日本初の試みがされている。この試みに対し,血縁の有無による母子関係の差を調べることで育児放棄された個体への方策として代理母が効果的か提案できると考えている。過去に行った研究でチェリアが母親と近接(< 2 m)している割合を調べ,アピ(オス,当時3歳)とリキ(オス,当時4歳)の割合と比較したところ,チェリア(当時2歳)が45%であったのに対し,アピとリキはそれぞれ24%,16%とチェリアが高い割合を示した。しかしこの研究は比較した3個体の年齢が一致していないという点で課題を残した。そこで本研究では,「3個体が2歳の時,母親と近接した割合はあまり変わらない」という仮説を立てた。仮説の検証のために,チェリア,アピ,リキの3個体の生後29か月~39か月の区間において母子間の近接時間の割合を比較した。その結果,3個体間に有意な差は見られなかった。この結果だけではジュリーのみがチェリアと接近したがり,チェリアにとってはジュリーがお節介となっている可能性も考えられるので,チェリア(生後30か月~41か月),アピ(生後35か月~46か月),リキ(生後52か月~65か月)において,母子間で接近・離反した回数のうち,母から接近・離反した割合及び,子から接近・離反した割合を調べた。その結果,チェリア-アピ間・チェリア―リキ間における子から離反した割合はチェリアが高く,有意な差が見られた。接近行動には有意な差は見られなかった。以上の2点の結果から,ジュリーは今のところ母親としての役割を果たしていると考えられる。また,本研究では母子間のみで見られる行動として「おんぶ」を定義した。「おんぶ」の発生頻度・時間を年齢の近いチェリア・アピ間で比較し,血縁関係の有無によって見られる行動に差が生じるのか考察する予定である。</p>
収録刊行物
-
- 霊長類研究 Supplement
-
霊長類研究 Supplement 34 (0), 80-80, 2018-07-01
日本霊長類学会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390001288094792832
-
- NII論文ID
- 130007521068
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可