長期変動の切り口からみる日本付近の多彩な季節サイクルと地域性の気候学(暖候期の降水を中心に)

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タイトル別名
  • Dynamic climatology on the variety of seasonal cycle around Japan and its locality paying attention to the long-term variability (With the focus on the precipitation in warm season)

抄録

100年間を超える長期間についての解析は,過去の気候の長期変動・変化自体の解明に必要なだけでなく,変動のパラメーターレンジの大きさの中での現象の多彩さや比較的稀な現象についても,かなり長い期間でみるからこそ,それなりの例数で把握出来ることに繋がる。つまり,長期変動から,動気候学的な『振れ幅も含めた平均像』が見えてくることになる。そこで今回は,このような観点から,基盤研究(S)(代表者:松本淳,2014〜2018年度)の中で行なって来た本グループの成果の一部を取り纏めて報告する。なお,長期変化を調べるための東アジア独自の注目すべき視点の検討のため,『大雨の質の多様性』,『季節の変わり目』にも注目した解析を行うとともに,1901年以降の長期解析として,東日本と西日本(東京と長崎を代表例として)での梅雨〜盛夏期の降水特性の多様性にも注目して解析を行なって来た(1950年代以降の中国大陸の雨に関する結果は,本大会で別に発表予定)。主な結果は次の通りである。<br>◆1971~2000年と比較して2000年代(2001~2010年)6月の総降水量は,50mm/day以上の大雨日の寄与の減少を反映して,九州北西部を中心にかなり減少。これは,梅雨最盛期に,相対的に大雨域の南北幅の広い事例の出現頻度の減少を反映していた点を指摘(Otani et al. 2015, SOLA)。<br>◆関東(東京を例に)での梅雨最盛期の大雨は,九州と違って,台風が南東側から接近する時も含めて,「基本場の傾圧性が大きく崩れぬ状況での地雨的な降水の持続」による事例も少なくない点が分かった(40年間のデータに基づく)。<br>◆東京と長崎の1901〜2010年の梅雨最盛期の降水の長期解析より,東京(関東)では,「大雨日」の寄与が大変小さくても総降水量が相対的に大きい年,九州と同様に「大雨日の大きな寄与」で総降水量も多くなる年,双方とも出現。前者は時間降水量10mm未満の「普通の雨」で特徴づけられる「非大雨日」の頻出,後者は,関東南西方の低圧部の持続により南風が通常以上に東方まで侵入することを反映。東日本の大雨の「質」や大気場の因子の多様性を提示。なお,長崎の梅雨最盛期に「大雨日」の寄与は少ないが総降水量はそれほど少なくない年につては,「大雨」にはならなくても時間降水量の1日の中での変動は小さくなく,対流的な要素も弱くないようであった。<br>その他,○盛夏期における日本列島規模での総降水量が小さくない日の総観的状況の梅雨期との違い。○1985-2015年暖候期の高知と岡山との大きな平均降水量差ΔPRに関わる日々の大きなΔPRの事例(30mm/日以上)について,基本的には高知側での強雨の発生を反映するが,大気場や山の影響の8,9月での大きな違いが示唆。また4月頃には,低気圧接近時の安定成層下での「普通の雨」が風上の高知側で持続する事例の少なからぬ寄与。○台風が日本列島に接近時の台風本体以外での広域の総降水量増大に関わる因子の,盛夏期,秋雨期,秋が深まる時期という季節毎の事例での違い。○1972〜2015年1月における北陸平野部での総降雪量の1987年以降の減少に対する,冬型1日あたりの降雪量の大きな減少の寄与,○日々のシベリア高気圧の季節的形成・衰退の特徴と日々の現象の関わりや,それらの季節進行の非対称性,等々,を明らかにした。<br>今回の発表では,以上の中から,主に,梅雨期や盛夏期の降水に関連した長期解析の結果を中心に報告する。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288141873024
  • NII論文ID
    130007628561
  • DOI
    10.14866/ajg.2019s.0_240
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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