P-1-F18 感染・ダンピング症候群を契機に一過性尿崩症を呈した重症心身障害者の1例

DOI

この論文をさがす

抄録

はじめに 中枢性尿崩症はいったん発症すると治癒することが稀とされるが、手術・妊娠などに伴って一過性に尿崩症を来す例が報告されている。今回感染とダンピング症候群を契機に尿崩症を発症したが、約2カ月の経過で軽快した重症心身障害者の1例を経験したので報告する。 症例 22歳 男性。頭蓋内出血後遺症による痙性四肢麻痺、最重度知的障害、てんかん、摂食嚥下障害。 既往歴 18歳 イレウスのため試験開腹(絞扼の所見なし)。20歳 喉頭気管分離術。21歳 イレウスのため開腹手術(回盲部切除、空腸癒着剥離、胃瘻造設)。 現病歴 22歳(胃瘻造設10カ月後)発熱に伴い血清Na・BUN・クレアチニンの上昇を認めた。血糖値が29−313mg/dlの間で変動、胃瘻からの注入終了後に著しい低血糖を認めることから後期ダンピング症候群と考え、消化態栄養剤から半消化態栄養剤に変更、約3時間かけて注入して血糖は安定した。高張性脱水の診断で輸液を行ったが、Na値はさらに上昇、1日尿量約3000 mlで、血清Na 163 mEq/l 、血漿浸透圧 337 mOsm / kgH2Oのとき、尿中Na測定限界以下、尿浸透圧 151 mOsm/kgH2O、ADH 0.8 pg / ml で相対的にADH分泌が低下していると考えられた。頭部MRI上、下垂体後葉はやや不明瞭だが、SOLを認めなかった。ピトレシン 0.1 mU / kg / 時で点滴静注を開始したところ、すみやかに尿量減少、尿中Naの排泄を認め、徐々に血清Na値は正常化した。デスモプレシン点鼻に切りかえ漸減し、2カ月で中止したが、尿崩症の再発を認めない。 考案 糖尿病に伴って尿崩症を発症した症例、尿崩症に伴って糖尿病を発症した症例の報告があり、血糖変動が尿崩症の発症に関与している可能性がある。胃瘻からの注入であっても、ダンピング症候群に注意が必要である。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ