学校における地域学習はどうあるべきで、そのために何をどう研究するか?

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タイトル別名
  • How the Local Area Leaning in School Education and Its Research should be?

抄録

Ⅰ.目的と背景<br><br>本発表の目的は、学校における地域学習はどうあるべきか、そのために何をどう研究するのがよいかを整理し、今後の社会に資することである。<br><br>地理学および地理教育にとって、「地域」は重要な概念である。「地域」が指すものは空間スケールや観点によって変わるが、学校教育においては「身近な地域」を通じて学ぶことがひとつの基礎となる。<br><br>地域学習は、義務教育段階においては社会科における「身近な地域の学習」、総合的な学習の時間において地域の社会・文化・防災・生態系等を取り上げた学習、理科における身の回りの生きものを素材にした学習、ほかにも家庭科や国語、音楽などさまざまな科目でおこなわれている。これらには、個々の教員の努力と熱意により工夫されているケースもあれば、教育委員会や学校が体系性をもたせている例もある。<br><br>しかし、地域学習に関する研究の多くは社会科地理をはじめとする教科・領域の教育や学校種の枠内での実践事例の紹介であり、体系的な整理がなされていない。また、各地の取り組み事例の比較考察による一般化がほとんどなされておらず、地域や学校の性格に対応した学びの体系が整理・共有されていない。さらに、地域学習全体として育む資質・能力も整理されていない。<br><br>他方、世界には環境、貧困、人権、平和、開発といった様々な問題がある。ESD(持続可能な開発のための教育)は、これら現代社会の課題に身近な地域から取り組むことにより、解決につながる新たな価値観や行動を生み出し、持続可能な社会を創造していくことを目指す学習や活動である。しかし、日本はかつてない人口の急減社会に突入しているため、地域社会の未来をどのように築いていくのか、また地域の若者をどのように育てていくのかが問われている。ESDは、現行の学習指導要領でも部分的に意識されているが、新学習指導要領においては「持続可能な社会づくり」、「持続可能な社会の創り手」といった表現で前文・総則から各教科に至るまで盛り込まれており、とりわけ地理関連では重視されている。したがって、教科・領域や学校種を超え、ESDをふまえた形で地域学習を整理することが、持続可能な社会の構築に対して有用である。<br><br> <br><br>Ⅱ.方法<br><br>まず、地域学習に関する社会的動向やこれまでの研究についてレビューする。その際、板橋・岩本・河本(2018)で発表者らが沖縄県国頭村・大宜味村で研究した内容の一部を援用する。<br><br>次に、新学習指導要領のうち平成29年(2017年)告示の小学校・中学校、および平成30年(2018年)告示の高等学校のものを使用して、「地域」関連記述の分析をおこなう。これについては、内容の一部を既に2018年人文地理学会大会(於:奈良大学)で報告したので、その紹介と補足をおこなう。<br><br>その後、事例研究に移る。今回は、農山村地域にある兵庫県美方郡香美町立小代小学校・小代中学校と京都府南丹市立美山小学校・美山中学校の事例をもとに整理・考察する。小代は発表者が過去10年間関わり続けている地域で教職員数名と面識があり、かつ2018年11月に第57回兵庫県へき地・複式教育研究大会が開催されたために研究紀要等の資料が整っているため選択した。美山は、発表者が10月に中学生に講演する機会を得たこと、同月の第67回全国へき地教育研究大会京都大会で中学校が分散会発表校、小学校が分科会会場となり、資料が整っていることから選択した。<br><br>これらの学校における地域学習の体系は、学年、教科、特別活動等の枠を超えてESDカレンダー(東京都の小学校教員であった手島利夫氏が開発したもので、総合的な学習の時間を核として教科単元や各学年の学習内容をつなげ、それを視覚化する手法)の形に整理し、扱っている地域資源やテーマ、子どもにつけようとしている資質・能力等の観点から分析した。<br><br> <br><br>文献<br><br>板橋孝幸・岩本廣美・河本大地 2018. 遠隔農村地域の学校教育における地域学習の実態―沖縄県国頭村・大宜味村の事例を中心に―.奈良教育大学紀要 67:1-15.<br><br>付記<br><br>本研究の一部には、公益財団法人国土地理協会の2018年度学術研究助成、および奈良教育大学の学長裁量経費を用いました。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288142654848
  • NII論文ID
    130007628674
  • DOI
    10.14866/ajg.2019s.0_333
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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