最終氷期最盛期の低海水準に対応した海底地形面の分布

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  • Distribution of submarine terraces corresponding to the low sea-levels at the Last Glacial Maximum
  • based on the multibeam bathymetric survey around Ryukyu Islands and the latest sea-level studies
  • ―琉球列島沿岸域のマルチビーム測深結果と最新の海水準研究を基にしてー

抄録

1. 本研究に至る経緯と研究方法<br><br> 水深80~100mでみられる海底平坦面の存在は,古くから陸棚面(貝塚 1955)などとして記載されていた。一方,最終氷期最盛期の海水準は現海面下120~130m付近にあったことが1980年代以降の研究によって判っていたが,最近,国際統合深海掘削計画(IODP)#325 グレートバリアリーフ(GBR)掘削によって,最終氷期におけるサンゴ礁の堆積過程(Webster et al. 2018)とともに, 最終氷期最盛期(LGM)の海水準が2段階に分かれて低下していたことが明らかになった(Yokoyama et al. 2018)。すなわち,約31kaの急激な海水準低下から始まるLGMであるが,28~22kaには海水準が比較的安定した時期(LGM-a)が現れ,その後21.9~20.5kaにかけて海水準が約20m低下して最低位(汎世界的平均海水準で現海面下約125~130m)に達し(LGM-b),19ka以降に後氷期海水準上昇に転じたというものである。<br><br> 我々は2010年以降,自ら所有するマルチビーム測深機(R2 Sonic 2022)を用いて,琉球列島中部から南部にて沿岸海域の高解像度マルチビーム測深を行ってきた。これまでに,喜界島・奄美大島・沖縄島本部半島周辺,沖縄島南城市周辺,久高島,久米島,石垣島,与那国島の沿岸域で1~2mグリッドの海底地形図作成を進めている(Kan et al. 2015など)。これらの成果のうち島棚斜面まで測深を行った地域を対象として,LGMの低海水準に対応した海底地形について検討を行った。<br><br>2. 最終氷期最盛期海水準付近でみられる海底平坦面および崖地形の分布について<br><br> 琉球列島沿岸域のマルチビーム測深結果では,水深90~100mの海底平坦面が広く認められる。久米島南東岸に広がる幅約3kmの島棚上では水深85~95mの間に4段の広い平坦面が認められる。また,久米島北部堂崎沖でも水深80~90m,90~105mの2段の平坦面が認められる。石垣島南部に広がる石西礁の南側では水深80~100mの緩斜面がある。石西礁北側では水深95m付近に平坦面があり,その沖側に97~103m,120~125mの2つの崖地形が認められる。沖縄島・本部半島沖の水納島南部には水深90~100mに,水納島西方の水納曽根には水深95~100mの平坦面と100~115mの崖,その南のカワハギ曽根には水深93~105mの平坦面と105から116mの崖地形が存在する。<br><br> 一方,本部半島南岸では,水深97~102mの幅狭の平坦面と105~115mの崖地形があり,その沖側の水深120~130mに幅1kmに及ぶ平坦面が存在する。<br><br> 以上の平坦面及び崖地形は,LGM-a期に現水深100m付近で安定した海水準の下で形成された可能性がある。サンゴ礁形成の北限域に近い琉球列島中南部の場合,GBRと同様に最終氷期最盛期に広範な海域で礁堆積物の堆積が進んだかどうかは判っていない。平坦面の原形が低海水準時の侵食によって形成された場合は,海底面の深度は造礁面と異なる可能性がある。将来,掘削などの試料採取が実現することが期待される。<br><br>謝辞:本研究はH28~32年度科研費 基盤研究(S) 16H06309「浅海底地形学を基にした沿岸域の先進的学際研究 -三次元海底地形で開くパラダイム-」(代表者:菅 浩伸)の成果の一部です。<br><br>引用文献:<br>貝塚爽平 1955. 地理学評論, 28, 15-26.<br><br>Yokoyama et al. 2018. Nature, 559, 603-607.<br><br>Webster et al. 2018. Nature Geoscience, 11, 426-432.<br><br>Kan et al. 2015. Geomorphology, 229, 112-124.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288143466752
  • NII論文ID
    130007628406
  • DOI
    10.14866/ajg.2019s.0_137
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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