ケニア山周辺域における近年の降水量変動の特徴とその季節性
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- 森島 済
- 日本大学
書誌事項
- タイトル別名
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- Characteristics of Recent Rainfall Variation and its Seasonality around Mt. Kenya
抄録
はじめに<br><br> 熱帯の山岳域では氷河の縮小が進行し,これを水資源として利用する周辺地域の人々への影響が指摘されている.ケニア山とその周辺地域もそうした例の1つに挙げられ,ケニア山の氷河縮小は急速に進行し,周辺河川の流量も減少傾向にある.一方,こうした流量の減少は,近年における東アフリカの広域的な降水量減少と共に生じている現象とも考えられる.東アフリカの降水量は様々な物理過程によって支配され,時空間的に高い変動性を示すが,1980年代以降の降水量は,3月から5月の季節で減少傾向にあることも指摘されている(Williams and Funk 2011; Lyon and DeWitt 2012など).この降水量減少の要因として,インド洋における急速な海面水温の昇温化が熱帯インド洋における対流活動の活発化や降水量の増加をもたらすことにより,東アフリカでの下降気流を強めるためといわれる(Funk et al. 2008).本研究では,このような指摘も踏まえ,近年のケニア山周辺地域の降水量変動の特徴を明らかにし,その要因を考察する.<br><br>今回の解析では,GPCCによる0.5°グリッドデータ(v2018)を使用した.降水帯の季節推移を確認するためにケニア山に近接する経度(E37.25°)に沿って降水量の緯度―時間断面図を作成すると共に,この結果から得られる季節性を踏まえ,ケニア山に近接するグリッド(N0.25°)において経年的な変化の特徴を確認した.<br><br>降水量の季節変化<br><br>平均的な月降水量から季節推移を確認すると,赤道に位置するケニア山近傍ではダブルピーク型の季節変化を持ち,3〜5月,10〜11月を中心として降水量が増加する(図1).これらの極大期はそれぞれ熱帯収束帯の北上,南下の時期に対応する.一方,スーダンやエチオピアなどの高緯度側で本格的な雨季となり,降水帯の北上がみられる7,8月においても,赤道域では降水が継続する特徴がみられるが,ケニア山近傍では月降水量が50mmを超えることはない.<br><br>季節別経年変化の特徴<br>雨季となる時期に基づき,一年を3〜8月,9〜2月の2季節に分け,ケニア山近接グリッドにおける季節降水量の経年変化を確認した(図2). 年降水量はおよそ500〜800mmの振幅をもって変動しているが,図示した期間において顕著なトレンドは認められない.9〜2月の降水量には増加傾向,3〜8月には減少傾向が認められるが,何れも緩やかである.一方,1980年代以降をみるとこれらの傾向は顕著であり,特に近年における3〜8月の降水量は平均に比較しても100mmに及ぶ減少を示す.
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2019s (0), 278-, 2019
公益社団法人 日本地理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001288143470208
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- NII論文ID
- 130007628510
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可