O-1-C14 重症心身障害児の衣生活支援と被服設計のための計測

DOI
  • 吉良 美緯
    奈良女子大学大学院 人間文化研究科 博士前期課程 心身健康学専攻
  • 吉田 哲也
    奈良女子大学研究院 生活環境科学系 教授
  • 富和 清隆
    東大寺福祉療育病院

この論文をさがす

抄録

目的 近年、重症心身障害児(以下、重症児)のQOLに着目した研究が発展しつつあるが、被服学分野からの取り組みは数少なく、着脱の難しさ、衣服のサイズの不適合、着心地や審美性への不満等、衣生活上の問題点はほとんど明らかにされていない。本研究は、被服構成学の観点から、難病や重い障害とともに生きる子どもたちを支援し、介護者の負担を軽減することを目指して、被服設計に必要な身体寸法の計測、およびトップスの製作・寝衣のリフォームに取り組む。 方法 ボランティア活動の機会に、重症児のケアに携わる職員やご家族から、被服に関する要望を聞き取った。計測は、東大寺福祉療育病院の入所・通所者のうち、保護者の同意が得られ、健康状態が比較的安定している重症児を対象とした。計測項目は、『子供服』服飾造形講座8、文化服装学院編、2007に準拠し、「子供服製作に必要な計測」の19項目を、被験者に負担のない姿勢を選び、幅0.8cmのメジャーを用いて着衣状態のまま計測した。身長は、立位がとれず体幹部や四肢の変形・拘縮、姿勢の異常を有する場合に適した「石原式測定法」で計測し、この計測点を丈寸法に関する項目に適用した。重症児のために新規に考案した「計測値記録用紙」に、被服設計に必要な情報と参考寸法を記録し、計測結果を既存のデータと比較・分析した。 結果 25名の計測データから、小児の発育評価に用いるKaup指数・Rohrer指数を算出した結果、被験者全体の80%と、幼児7名を除く学齢期の児童の70%以上が細く痩せた体格であることを確認し、JIS衣料のサイズの「基本身体寸法」である身長・胸囲等と、周径項目についても検討した。「計測値記録用紙」には、計測時の着衣や装具、計測姿勢、筋緊張の異常等、開口部の設計や被服の構造を決定する際に必要な情報を、詳細に記録した。年齢・性別・障害の程度によって異なる体型・サイズ等を確認し、計測結果と介護者の要望を、被服製作・リフォームに反映させた。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ