耳下腺癌に対する診断,治療の基本方針

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  • 河田 了
    大阪医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室

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タイトル別名
  • Management of diagnosis and therapy for parotid carcinoma

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抄録

耳下腺癌は頻度が少なく,組織別,病期別の治療方針が確立されているとは言い難い.そのため,一定の方針で治療を行っている施設は少ないと思われる.当科では1999年9月から2017年12月までの約18年間に加療を施行した耳下腺癌新鮮症例は181例であり,一定した診断,治療方針で臨んできた.主な組織型は粘表皮癌が47例,多形腺腫由来癌が27例,腺様嚢胞癌が21例,唾液腺導管癌が14例であった.耳下腺癌の悪性徴候とされる,自発痛/圧痛を認める症例は全体の52%,術前顔面神経麻痺を認めた症例は19%であった.術前の穿刺吸引細胞診と術中迅速診断によって正しい悪性度が診断できたのは,穿刺吸引細胞診で約1/3,術中迅速診断で約2/3の症例であった.局所切除の方針は,腫瘍の大きさ(浸潤程度),位置(特に顔面神経との位置関係),悪性度によった.頸部リンパ節に対しては,転移陽性例および高悪性例に対して全頸部郭清術,低/中悪性の転移陰性例には選択的頸部郭清術を施行した.ステージ別の疾患特異的5年生存率はステージⅠ(19例)が100%,Ⅱ(56例)が97.6%,Ⅲ(17例)が71.3%,Ⅳ(53例)が53.1%であった.病理組織学的悪性度別の疾患特異的5年生存率は,低/中悪性(90例)が95.8%,高悪性(55例)が47.1%であった.HER2やARは高悪性癌ほど発現率が高く,抗HER2あるいは抗AR療法の可能性が示唆された.

収録刊行物

  • 口腔・咽頭科

    口腔・咽頭科 31 (2), 179-182, 2018

    日本口腔・咽頭科学会

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