口腔習癖からブリッジの脱離にいたった自閉スペクトラム症者の1例

DOI
  • 高井 経之
    たかいデンタルクリニック 京都歯科サービスセンター北部診療所 松本歯科大学地域連携歯科学講座
  • 市岡 宏顕
    京都歯科サービスセンター北部診療所 京都府立医科大学大学院医学研究科法医学教室
  • 水野 和子
    京都歯科サービスセンター中央診療所
  • 太田 義之
    京都歯科サービスセンター北部診療所 京都歯科サービスセンター中央診療所
  • 安岡 良介
    京都歯科サービスセンター北部診療所 京都歯科サービスセンター中央診療所
  • 小笠原 正
    松本歯科大学地域連携歯科学講座

書誌事項

タイトル別名
  • Detachment of a Bridge by Oral Habit in a Patient with Autism Spectrum Disorder:A Case Report

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抄録

<p>障害者の欠損補綴に関してはさまざまな困難性があり慎重な対応が求められる.今回われわれは|1の歯根破折による抜歯後にブリッジを装着したところ,約1カ月後に脱離にいたり,その後の対応に苦慮した1例を経験したので報告する.</p><p>症例は46歳,自閉スペクトラム症の男性で,|1の動揺を主訴に来院した.ジアゼパムによる前投薬と亜酸化窒素吸入鎮静法下にて|1の抜歯後,①|1②レジン前装金属冠ブリッジを装着したが,1カ月後にブリッジが脱離した.その際にハンカチを咬んで引っ張るという習癖があることが発覚した.以後,支台歯を抜髄し,リテーナーを装着するも,頻繁に脱落や破折,紛失などを繰り返すようになり,最終的に補綴処置を断念した.その後も拳で顎を叩く自傷行為が発現し,他の歯にも歯冠破折がみられるようになった.</p><p>高齢の母親と二人暮らしでいわゆる老若介護の状態であり,母親から詳細な既往や患者の状況などを聴取することが困難であった.術前には習癖や自傷行為の存在を疑ってはいたものの確認できなかった.障害者の補綴処置の困難性を痛感させられ,生活環境や患者の行動などを十分に監視し,対応する必要があると改めて認識させられた.</p>

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