危険ドラッグ、ジフェニジンの死亡事例と生体影響評価

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  • A death case detected diphenidine as a new psychoactive substance, tissue distribution and mechanistic study of diphenidine

抄録

<p>【背景】近年世界的な問題となった危険ドラッグであるが、その代表的成分であるカチノン系化合物や合成カンナビノイド系化合物とは異なる強力な成分が存在する。ジフェニジンはその一つであり、幻覚剤PCPや解離性麻酔薬ケタミンの構造類似体で、NMDA受容体に拮抗することで強力な作用を発現する。当講座で実施した解剖事例において、血液中からジフェンジンが検出されたことを契機に、その生体内動態や依存性発現メカニズム等について詳細な検討を行ってきた。</p><p>【死亡例】統合失調症を患い通院中の40歳代男性が自室にて座位前屈で死亡して発見された。死亡2週間前に危険ドラッグ所持により警察の取り調べをうけているが、死亡時、処方された治療薬の残量に矛盾はなく、自室に危険ドラッグは見当たらなかった。司法解剖時、死斑発現は極めて強度。舌根部から咽頭、喉頭、気管分岐部を超え、胃内容物が充満。その他急死の所見が多数認められた。LC-MS/MSによるスクリーニングから、血液及び尿中にジフェニジンの含有が示唆された。本屍の死因は誤嚥による窒息と診断されたが、誤嚥を誘発した原因として薬物による中枢神経抑制を介した咽頭喉頭反射の消失が強く示唆された。</p><p>【組織分布】ジフェニジンの血中濃度は左心血で29.2 ng/mLであった。組織では最低値を示した頭蓋骨で10.4 ng/mL、脂肪組織で最高値を示し365.5 ng/mLとなった。フェニル基水酸化体の未変化体に対する存在割合は肺、肝蔵および尿で10%を超え、シトクロームP450による水酸化を受けた後の尿中排泄が推測された。</p><p>【依存性メカニズム】ラット脳マイクロダイアリシスによる検討を行ったところ、ジフェニジン投与直後から自発的運動量の増加と側坐核におけるドーパミンの濃度上昇が観察された。この結果により、ジフェニジンは黒質~線条体のA9神経系よりも、腹側被蓋野~辺縁系のA10神経系、いわゆる脳内報酬系を優位に刺激していることが示唆された。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288152643712
  • NII論文ID
    130007677521
  • DOI
    10.14869/toxpt.46.1.0_s12-2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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