亜ヒ酸による細胞の遊走および浸潤能の促進作用

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タイトル別名
  • Promoting action of cell migration and invasion by arsenite

抄録

<p>【目的】アジア諸地域での井戸水を介した、慢性ヒ素曝露により多臓器への発がんが問題となっているが、機序に関して不明な点が多い。一方、がん細胞の遊走および浸潤は、がんの転移過程において極めて重要である。そこで本研究では、細胞の遊走能や浸潤能に対するヒ素化合物の影響について検討することを目的とした。</p><p>【方法】細胞:ヒト表皮角化HaCaT細胞。ヒ素化合物:メタ亜ヒ酸ナトリウム(As(III))。タンパク質発現量:ウエスタンブロット法で検出した。 長期曝露:3 or 4日ごとに継代を行い, 継代ごとにAs(III)を添加した。遊走能:スクラッチ法。浸潤能:マトリゲルを通過した細胞をギムザ染色し、顕微鏡で観察した。</p><p>【結果】遊走能に対する実験: HB-EGFにより誘発されるHaCaT細胞の遊走能に対するAs(III)の影響を検討したところ、As(III)の曝露によりHB-EGF単独添加と比べ細胞の遊走能がより増強された。As(III)の遊走増強作用を明らかにするために、MAPKsやPI3Kの阻害剤を用いたところ、ERK, p38, JNKの阻害剤により、HB-EGFによる遊走活性が阻害された。次に、ERK, p38, JNKのリン酸化に対するAs(III)曝露の影響を検討したところ、HB-EGFによるERKのリン酸化が、As(III)の共存により増強された。以上の結果から、As(III)によるHaCaT細胞の遊走能増強作用において、ERKの関与が明らかとなった。</p><p>浸潤能に対する実験:As(III)による細胞の浸潤能への影響を明らかにするために、HaCaT細胞を0.5, 1.0 µM のAs(III)に1〜3週間曝露した。As(III)に曝露されたHaCaT細胞をマトリゲル上に播種し、FBSに対する浸潤能を比較したところ、As(III)の曝露濃度および曝露時間により浸潤能の増強が検出された</p><p>【考察】HaCaT細胞をAs(III)に曝露することにより細胞の遊走および浸潤能が増強されることを見出した。今後、As(III)によるERKのリン酸化の活性化経路ならびに、浸潤能の活性化に関わる因子を同定していきたいと考えている。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288152887168
  • NII論文ID
    130007677373
  • DOI
    10.14869/toxpt.46.1.0_p-197
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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