バングラデシュヒ素汚染地域の住民の血液ゲノムにおける血圧と関連するNup35メチル化変化

DOI
  • 鈴木 武博
    国立環境研究所 環境リスク・健康研究センター
  • Khaled HOSSAIN
    Department of Biochemistry and Molecular Biology, University of Rajshahi, Bangladesh
  • 姫野 誠一郎
    徳島文理大学薬学部・衛生化学研究室
  • 野原 恵子
    国立環境研究所 環境リスク・健康研究センター

書誌事項

タイトル別名
  • Nup35 DNA methylation change associated with blood pressure in the blood genome of residents in arsenic-endemic area of Bangladesh

抄録

<p>【背景・目的】バングラデシュをはじめ世界各国で、天然由来の無機ヒ素の慢性曝露により、様々な健康被害が報告されている。世界での主要な死亡原因である心疾患の重要なリスク要因に、高血圧症があげられ、慢性ヒ素曝露と血圧上昇との関連も報告されている。我々は、ヒ素曝露と関連する疾患に関与するDNAメチル化変化部位の同定を目指しており、バングラデシュ住民の血液を用いてDNAメチル化解析を行なっている。これまで、グローバルなDNA低メチル化のマーカーであるLINE-1メチル化が、ヒ素曝露及び血圧上昇と相関することを見出している。本研究では、ヒ素曝露及び血圧上昇に関連する新規DNAメチル化変化を検討した。</p><p>【実験】バングラデシュのヒ素汚染地域と非ヒ素汚染地域の男女数名分の血液ゲノムDNAをプールし、MethylationEPIC BeadChipによりゲノムワイドなCpGサイトのメチル化解析を行った。ヒ素汚染地域と非ヒ素汚染地域で比較して変化がみられたCpGサイトについて、パイロシークエンスにより約250名の血液ゲノムのDNAメチル化を測定した。</p><p>【結果・考察】ゲノムワイドなメチル化解析により、ヒ素汚染地域でメチル化率が変化するCpG部位を複数見出した。そのうちの1つはNup35遺伝子転写開始点付近に存在するCpGであった。このCpGについて、dsSNPにより変異を検索したところ、これらの部位にはアジアでは変異頻度が低く、ヒ素汚染地域のみ変異が集中することは考えにくいことがわかった。次にパイロシークエンスでメチル化率を測定したところ、ゲノムワイドメチル化測定に対応してヒ素汚染地域でメチル化が有意に減少した。また、回帰分析により、そのCpGと血圧との間に有意な負の相関があることがわかった。これらの結果から、Nup35メチル化は、LINE-1メチル化と同様にヒ素汚染による血圧上昇に関連するマーカーとなる可能性が示唆された。今後、残りのメチル化が変化したCpGサイトについて、パイロシークエンサーによりメチル化率を測定する予定である。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288152893056
  • NII論文ID
    130007677414
  • DOI
    10.14869/toxpt.46.1.0_p-230
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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