メチル水銀は血管内皮増殖因子の発現亢進によって血液脳関門障害を引き起こす

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タイトル別名
  • Methylmercury causes blood-brain barrier damage via upregulation of vascular endothelial growth factor expression

説明

<p>水俣病の公式発見から50年以上が経過しているにもかかわらず、現在でもメチル水銀の毒性発現機構は不明の部分が多い。特に小脳および大脳皮質の後頭葉等の部位特異的な神経細胞傷害の発生メカニズムについては多くの研究が行われてきたが、完全な解明には至っていない。これまでの研究は、メチル水銀が直接的に神経細胞に作用し傷害を引き起こすことに着目した研究が殆どであるが、血管に対する作用に着目した研究も存在する。水俣病剖検例を用いた研究では、血液脳関門 (BBB) の破綻に関係する脳浮腫等の発生が観察されている。さらに、近年の培養細胞を用いた研究によって、メチル水銀が血液脳関門 (BBB) の破綻を引き起こす血管内皮増殖因子 (VEGF) を発現亢進させることが報告された。以上の研究結果に基づいて、‟メチル水銀が従来報告されてきた神経細胞への直接的な傷害だけではなく、VEGFの発現亢進を介した血液脳関門の障害によって部位特異的な神経細胞傷害を発生させる” という仮説を立て、ラット急性期メチル水銀中毒モデルを用いた検討を行った。その結果、メチル水銀曝露が、水俣病で神経細胞傷害がみられる小脳および後頭葉におけるVEGFの発現亢進を引き起こし、その作用は小脳で特に顕著であることを確認した。また、小脳では血液成分が脳組織へ漏出していることが観察されたことから、メチル水銀がBBBの障害を引き起こしていることが明らかになった。さらに、VEGFの作用を中和する抗VEGF抗体をメチル水銀中毒ラットに投与したところ、神経細胞傷害および運動機能障害 (後肢交差現象) に対して抑制作用を示した。以上の結果から、水俣病で観察される部位特異的な神経細胞傷害の発生メカニズムに、メチル水銀によるVEGF発現亢進を介したBBBの障害が関与していることが示唆された。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288152920192
  • NII論文ID
    130007677623
  • DOI
    10.14869/toxpt.46.1.0_w8-4
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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