死生観と放射能に対するリスク認知の関連

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タイトル別名
  • Relationship between death attitude and risk perception of radiation
  • Relationship between death attitude and risk perception of radiation : A comparison between residents in an evacuation zone and Tokyo
  • A comparison between residents in an evacuation zone and Tokyo
  • 避難地域住民と東京住民の比較

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抄録

多くの犠牲者を生んだ東日本大震災とそれによって生じた福島第一原発事故は、他の多くの災害に関して指摘されるように、人びとの死生観に対して一定の影響を及ぼしたと考えられる。しかしこのような死生観の変化がどのようなものであるかはいまだ検討されていない。そこで本研究では、第一原発事故によって避難を余儀なくされた地域の1つである福島県飯舘村に勤務する人々と東京都の住民を対象に、彼らの死生観がどのように異なるのかを比較検討することを第一の目的とした。また、リスク認知については、個人の持つ世界観がリスク認知と関連することが指摘されてきた。死生観は人びとの人生観において中心的な役割を果たすとされている。そうであるとすれば、この死生観も世界観と同様に、リスク認知と関連する可能性が想定できる。そこで本研究では、個人の持つ死生観が放射能に対するリスク認知とどのように関連するかを検討することを第二の目的とした。飯舘村の工場の被雇用者163名と東京都住民315名に質問紙調査を実施した。その結果、①飯舘村群は、東京都群と比べて、人生の目的意識因子の得点が有意に低いこと(目的1)、②死生観の下位尺度のうち、飯舘村群では放射能に対するリスク認知と死後の世界観および死からの回避が関連する一方、東京群では人生における目的意識および死への関心が関連することが示された。これらの結果は、飯舘村に勤務する人々に対しては、人生における目的意識に焦点を当てた働きかけが有益となりうること、ならびに放射能に対するリスク認知を検討するに際しては、個人の死生観を考慮に入れる必要があることを示唆している。

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