東北タイの農村金融と脆弱性

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タイトル別名
  • Vulnerability and Rural Finance in the North-East Thailand
  • トウホク タイ ノ ノウソン キンユウ ト ゼイジャクセイ

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抄録

本論文は、貧困問題の解決の一つとして注目を集めたマイクロ・ファイナンスと脆弱性の関係について論じたものである。マイクロ・ファイナンスは、所得の低い貧困層であっても少額でも融資機会を得られれば、自らの工夫や事業開拓機会を得ることで貧困から脱却を図ることができるとして貧困削減の有効なツールとして捉えられてきた。一方、マイクロ・ファイナンスが脚光を浴びた1990年代以降、その効果に関する理論的・実証的研究も数多く行われ、有効性が限定的であることも明らかになってきた。しかし、より批判的な視点から、マイクロ・ファイナンスが農民や貧困層にもたらす負の影響について検証した論文は少ない。タイでは1990年代に急速な経済成長を遂げる一方で、農村部は深刻な負債問題に困窮化が進み、その原因のひとつに1980年代から続く農民向け政府系金融機関であるところの農業・農業協同組合銀行(Bank for Agriculture and Agricultural Cooperatives)からのマイクロファイナンス事業があった。本論文は農民へのインタビュー調査を通して、負債を累積させてしまう背景に急速な開発に伴う都市部と農村部における情報入手の非対称や、急速な社会変化に伴う不安が中央(政府や行政)への過度な期待をもたらし、BAACから借り続けることで安全・安心を得ようとする農民の意識構造があることを明らかにした。そうした農民の脆弱性に対する主観的意識を如何にプロジェクトに組み込むかが重要であると主張した。

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