口腔顎顔面領域の超音波診断の現状と将来

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  • 林 孝文
    新潟大学大学院医歯学総合研究科顎顔面放射線学分野

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抄録

平成時代30年の間に,口腔顎顔面領域の画像診断は長足の進歩を遂げた。CTや歯科用コーンビームCT,MRIやPET,超音波診断などの多様なモダリティが発展普及し,日常診療に欠かせない診療機器となった。しかしその一方で,さまざまな場面でそうした機器が利用されてもそれらの特性を十分に活かしきれない状況が散見され,使う側の能力がより重大な要素となってきているように思われる。診断精度というものはきわめてシンプルな数字として表現されるものではあるが,そのベースとなっている診断基準は実際にはかなり曖昧なものであり,画像解釈は多分に知識と経験の影響を受ける。なかでも診断精度が検査医依存で画像の客観性に乏しいとされる超音波診断はそうした傾向が強い。超音波診断装置は,技術進歩に伴い近年急速にスマートデバイス化がすすんでおり,主治医が「触診の視覚化ツール」として一人一台手にすることも可能な時代に入った。装置が安価で簡便になればなるほど,ますます使う側の技量が試されるようになる。こうした状況を踏まえて,この機会に私自身の30年余りにわたる超音波診断の臨床経験について総括し宿題報告とさせていただき,少しでも超音波診断の新時代の幕開けの礎となることができれば,望外の喜びである。講演内容としては,これまで臨床研究を行ってきた口腔癌の頸部リンパ節転移の診断,舌癌の深達度評価などの口腔内超音波診断,顎関節症における顎関節包や根尖性歯周炎における病変の画像化の経験についてまとめ,さらなる高性能化のための基礎的研究も紹介させていただくとともに,今後のさらなる普及を見据えた遠隔画像診断サポートやハンズオン研修等を含めた口腔顎顔面領域の超音波診断の将来像について語りたいと考える。

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