書誌事項
- タイトル別名
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- Why is Photomultiplier Tube Still Being Used? : For Extreme Measurement(<Special Series>To International Year of Light 2015)
- 国際光年IYL2015に寄せて 実験技術 なぜ光電子増倍管(真空管)か? : 極限計測の為に
- コクサイ コウネン IYL2015 ニ ヨセテ ジッケン ギジュツ ナゼ コウデンシ ゾウ バイカン(シンクウカン)カ? : キョクゲン ケイソク ノ タメ ニ
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説明
光による計測技術は,より高度な現象の解明への大きな手法となりつつあり,非破壊による物質の分析,高速現象の計測,高感度検出性などに特長づけられ,特に,医学,高エネルギー物理学,分光分析,バイオテクノロジーなどの分野では,光センサの性能の極限化が求められている.光センサは,外部光電効果型,内部光電効果型,熱型と大きく3つに分けられ,外部光電効果(真空中の金属や半導体に光を当てた時,表面から真空中に電子が放出される現象)を利用した製品として真空管技術を使った光電子増倍管(PMT:Photomultiplier Tube)がある.真空管=古い技術と思われるかもしれないが,PMTは,高速応答性と広い有効面積を持ち,なおかつ超高感度であるため,幅広い計測分野において最前線で使用されている.PMTは,一般的にガラス管で封じられた真空管で,光が入射する入射窓,光を光電子に変換する光電面,光電子を集める集束電極,電子を増倍する電子増倍部,増倍した電子を取り出す陽極で構成され,電子軌道解析により最適な電極設計がなされている.PMTに入射した光は,ガラス窓を透過して光電面から真空中に光電子を放出する.その光電子は電極に与えた電圧で加速され,集束電極で第一ダイノード上に収束され,二次電子を放出した後,引き続く各ダイノード群で二次電子放出を繰り返し約100万倍まで増幅され,最終ダイノードより放出された二次電子群は陽極より信号として取り出される.PMT内部は高真空(クリーン)なので,高性能な光電面の作製が可能で,光を光電子に変換する効率は40%以上にまで達している.また,電子は真空場に形成した電場で制御できるので,最大径50センチの光電面から放出した光電子を,数センチの面積に集めることが可能となっている.更に,電子は高真空中を走行するので,高速な時間特性の取得が可能である.光を粒として数えられる高感度と高速応答特性が,PMTが最前線で利用される理由である.PMTの発展は,光電面と二次電子増倍部の開発の歴史に基づいている.光電面は,計測用途に応じ,可視域用バイアルカリ光電面,赤外域まで感度のあるマルチアルカリ光電面,紫外検出用アルカリハライド光電面や,紫外から近赤外域で高い感度を持つIII-V族化合物半導体を用いた光電面が開発されている.二次電子増倍部も同様に,サーキュラケージ型,ラインフォーカス型,ボックスアンドグリッド型,ファインメッシュ型,メタルチャンネル型が開発されている.最近のトピックスとして,MEMS技術によるシリコン基板電極を用いた指先に載る世界最小のマイクロPMTや,電子管に半導体素子を内蔵した新しい光センサ:Hybrid Photo-Detectorの開発を進めている.
収録刊行物
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- 日本物理学会誌
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日本物理学会誌 70 (11), 845-850, 2015-11-05
一般社団法人 日本物理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001288157311744
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- NII論文ID
- 110010000878
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- NII書誌ID
- AN00196952
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- ISSN
- 24238872
- 00290181
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- NDL書誌ID
- 026839690
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- NDLサーチ
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可