集学的治療期から在宅期における呼吸機能に着目した悪性胸膜中皮腫の1症例

DOI
  • 田中 隆史
    兵庫医科大学病院リハビリテーション部
  • 森下 慎一郎
    新潟医療福祉大学医療技術学部理学療法学科 兵庫医科大学リハビリテーション医学教室
  • 内山 侑紀
    兵庫医科大学リハビリテーション科
  • 道免 和久
    兵庫医科大学リハビリテーション医学教室

抄録

<p>【背景】悪性胸膜中皮腫(MPM)は,胸膜などに発生する予後不良の悪性腫瘍であるが,組織型やPerformance Status(PS)などの好条件が揃えば,化学療法,手術療法などの集学的治療により予後向上を得ることが可能となっている.今回,MPMに対して化学療法および胸膜切除/肺剥皮術を施行した患者の呼吸機能に着目し,運動機能への影響について検討した.</p><p> </p><p>【症例】51歳,男性,171cm,88.6kg,BMI 30.3,職業 警察官</p><p>診断名: 右悪性胸膜中皮腫,StageⅠ,PS0,アスベスト暴露歴なし.</p><p> 現病歴および経過: X-1年12月 上記診断.X年3月 当院入院し抗がん剤治療3クール実施,同年6月 P/D施行,POD(術後日)22 自宅退院.以降当院呼吸器外科外来通院.</p><p> 評価項目: 呼吸機能として,努力性肺活量(FVC),1秒量(FEV1.0)を測定した.運動機能として6分間歩行距離(6MWD),膝伸展筋力体重比,その他身体所見はカルテより抽出した.</p><p> </p><p>【結果】理学療法介入中の主たる問題点として,①化学療法実施期は抗がん剤による倦怠感,②P/D術後は呼吸困難感が挙げられた.①では起居動作や歩行などの基本動作練習を中心に実施し,②では早期離床練習に続き有酸素運動を中心とした持久力運動を実施した.</p><p> 評価結果を[化学療法前,術前,術後退院時(POD14),術後1年]の順に示す.体重[88.6,85.1,84.7,82.4kg],FVC[5.07,5.16,2.45,3.09L],FEV1.0[3.86,3.98,2.07,2.60L],6MWD[443,441,294,431m],膝伸展筋力体重比[0.87,0.82,0.79,0.77kgf/kg]</p><p> </p><p>【考察および結論】先行研究では,MPMに対するP/D術後は,肺活量変化量が運動耐容能の変化量に関連することが明らかになっている.今回の介入で,抗がん剤投与後も同様に,呼吸機能維持が運動耐容能の維持に寄与している可能性が示唆された.MPMに対する理学療法施行にあたっては,呼吸機能に留意することが特に重要と思われた.</p><p> </p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本報告はヘルシンキ宣言を尊守する.対象症例には評価内容を研究説明書によって詳細に説明し,書面で同意を得た.なお,本報告に関する研究は兵庫医科大学倫理審査委員会による承認を得ている(第1690号).</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), A-81_2-A-81_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288157368832
  • NII論文ID
    130007692561
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.a-81_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ