勤労者における喫煙状況による身体組成や生活習慣の相違と呼吸機能に影響を与える要因

DOI
  • 井元 淳
    九州栄養福祉大学リハビリテーション学部 産業医科大学大学院医学研究科産業衛生学専攻
  • 大和 浩
    産業医科大学産業生態科学研究所健康開発科学
  • 道下 竜馬
    産業医科大学産業生態科学研究所健康開発科学
  • 姜 英
    産業医科大学産業生態科学研究所健康開発科学
  • 西山 信吾
    産業医科大学産業生態科学研究所健康開発科学
  • 福田 里香
    九州労災病院治療就労両立支援センター
  • 出口 純子
    九州労災病院治療就労両立支援センター

抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p>加齢に伴う呼吸機能の低下は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の発症や高齢者の死亡リスクに繋がるため,若い世代からの呼吸機能低下の予防が求められる.本研究では,喫煙量の違いによる身体特性や生活習慣の相違を明らかにし,またCOPDの所見がない勤労者で身体特性や生活習慣が呼吸機能に影響を与えているのか喫煙状況を加味した上で検討することを目的とした.</p><p>【方法】</p><p>2016年から2年間の健康測定に参加した5企業の男性従業員のうち,心血管・脳血管・呼吸器疾患、癌を有するもの,問診票に欠落があるものを除く262名を対象とした.自記式問診票にて喫煙状況(非喫煙,元喫煙,現喫煙),喫煙者との同居,受動喫煙の曝露頻度,身体活動量(PA)など生活習慣を聴取した.現喫煙者は喫煙量により軽喫煙者(LS)と重喫煙者(HS)に分類した.PAは国際標準化身体活動質問票short versionを用いて強度別PAと1日合計PAを評価した.身体組成は体成分分析装置(InBody720),内臓脂肪面積(VFA)は内臓脂肪測定装置(HDS-2000 DUALSCAN),また呼吸機能検査は電子式診断用スパイロメータ(AS-507オートスパイロ)を用いて測定した.統計学的分析は参加者情報,生活習慣,身体組成,呼吸機能について非喫煙者との比較をロジスティック回帰分析で年齢を調整して検討した.また,年齢,身長,喫煙状況を調整変数とした重回帰分析により呼吸機能に影響を与える要因を検討した. </p><p>【結果】</p><p>非喫煙者と比較し,元喫煙者とHSでは年齢が有意に高く,LSで有意に低かった.ロジスティック回帰分析の結果,元喫煙者は非喫煙者と比較し,脂質異常症の存在,体脂肪率が有意に高かった.現喫煙者は体脂肪率,VFA,喫煙者との同居率,受動喫煙の曝露頻度が有意に高く,高強度PAと1日合計PAは有意に低かった.LSでは脂質異常症の存在と受動喫煙の曝露頻度が有意に高かった.HSでは体脂肪率,VFA,喫煙者との同居率,受動喫煙の曝露頻度が有意に高く,全てのPAと1秒率が有意に低かった.重回帰分析の結果,努力性肺活量(FVC)ではメタボリックシンドローム(MetS)のリスクの存在,体幹筋肉量,VFA,1秒量(FEV1)ではMetSリスクの存在,除脂肪量,VFAが抽出され,1秒率では受動喫煙の曝露頻度のみ抽出された.</p><p>【結論】</p><p>非喫煙者と比較し,現喫煙者は内臓脂肪蓄積型肥満のリスクが高くなることが示唆された.また,現喫煙者は喫煙者との同居や家庭外での受動喫煙の曝露頻度が多く,PAでは身体活動の回数とともに消費カロリーが少ないことが示された.これらは現喫煙者の中でもHSでその傾向が顕著であった.また本研究で,FVCとFEV1は喫煙状況に関係なく筋肉量やVFAなどの身体組成やMetSリスクの有無と有意な関係が見られた.一方,閉塞性の呼吸機能の指標となる1秒率は,喫煙状況に関係なく受動喫煙の曝露頻度のみに有意な関係が認められ,COPD発症の予防策として受動喫煙を避ける必要性が示された.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は産業医科大学倫理委員会の承認を得て実施し(承認番号H28-049),対象者には研究の趣旨およびプライバシー保護に関して十分な説明を行い,同意を得た.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), C-52_1-C-52_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288157390464
  • NII論文ID
    130007692808
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.c-52_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ