機能的電気刺激療法が急性期脳卒中患者に及ぼす治療効果の検討

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抄録

<p>【はじめに・目的】</p><p>近年、脳卒中患者の中枢神経障害に対し、機能的電気刺激(functional electrical stimulation: FES)装置の使用が普及してきているが、回復期・維持期の報告が多く、急性期における効果は明らかではない。本研究の目的はFES使用が脳卒中急性期患者の下肢機能に与える影響を検討することである。</p><p>【方法】</p><p>対象は初発脳卒中入院患者12名(男性4名、女性8名、平均年齢68.7±11.6歳)とした。対象を通常リハ群とFESリハ群(通常リハ+随意運動介助型電気装置(IVES)使用)の2群に割り付け、介入開始日から退院日まで毎日介入した。FESリハ群では、自動運動時に対象となる筋(股屈曲・伸展筋、膝伸展筋、足背屈筋)にIVESパワーアシストモード(PAモード)で電気刺激を加え、歩行練習時に股屈曲筋にPAモード、足背屈筋にセンサートリガーモード(STモード)で電気刺激を加えた。自動運動は各関節運動を30回×3セット実施し、歩行練習は計20分間実施した。評価項目はBrunnstrom stage、Stroke Impairment Assessment Set(SIAS)下肢機能、徒手筋力計(モービィ、酒井医療株式会社製)を使用した麻痺側下肢筋力(股屈曲、膝伸展、足背屈:kgf/BW)、Functional Independence Measure(FIM)運動項目、Functional Ambulation Category(FAC)、10m歩行テスト(速度)、2分間歩行テスト(距離)を測定した。10m歩行テストの際にゲイトジャッジシステム(パシフィックサプライ株式会社製)にて歩行時の足関節最大背屈角度、足関節底屈トルク(1st・2ndピーク)を測定した。両群の初期評価、1週間後、最終評価(退院日前日)の上記評価項目について反復測定2元配置分散分析(評価時期×群)を実施し、交互作用が有意な場合には群毎に反復測定1元配置分散分析と多重比較検定(Dunnett)を実施した。統計ソフトはIBM SPSS Statistics ver.25を使用し、有意水準は5%とした。</p><p>【結果】</p><p>交互作用は、SIAS足背屈、股屈曲筋力、歩行速度、2分間歩行距離で有意であった。その後の検定で、歩行速度は通常リハ群で初期の0.58±0.15m/sから最終の0.83±0.22m/sと有意に改善したのに対し、FESリハ群では0.50±0.22m/sから1.06±0.43m/sに有意な改善を認めた。2分間歩行距離は、通常リハ群では有意な改善を認めなかったが、FESリハ群では、初期の80.0±34.8mに対して、1週間後112.0±48.2m、最終139.0±54.0mと共に有意な改善を認めた。</p><p>【考察】</p><p>回復期や維持期と同様に急性期脳卒中患者においてFESを併用することで、麻痺側機能の改善や歩行能力が通常リハ群と比較し、改善する可能性がある。さらに、先行研究では検証されていない、2分間歩行距離も改善したことから、歩行耐久性も向上する可能性も示唆された。これらの治療効果は最終評価時に多く得られていることから、一定の継続治療の必要性も示唆された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は当院の倫理審査委員会の承認を得て実施した。対象者には本研究の意図を説明し、同意を得られた者を対象とした。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), E-148_2-E-148_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001288157404032
  • NII論文ID
    130007692973
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.e-148_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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